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「その子の声は聞かなかったの?」
「声?」
「ほら、好きですとかって……渡しながら言うもんじゃねえの? よく分かんねえけど」
ミツオの質問に、マサハルは一割ほど減ったコーラを飲みながら、考え込む表情を浮かべた。
「あのさ、それ言ったら、ラブレターを渡す意味なくね?」
「まあ、そうだけどさ。じゃあ何も言わずに渡してきたの?」
マサハルはまたちびちびとコーラを飲んで考える。
「誰かが走り去る音がして、気がついたら、膝の上にこれがあった」
「ああ、いい! なんかマジっぽい! 恥ずかしくて一言も言えずに立ち去る、みたいな⁉︎ 可愛い! もうそれだけで惚れる!」
「ちょろいなーミツオ」
マサハルは脚を大きく開き、ミツオとは対照的なテンションでため息をついた。
「……どうしたんだよ。ラブレターもらったんだぞ? もっと盛り上がれよ」
「ミツオ。お前は本当にアホだな。浮かれてんじゃないよまったく。ええ?」
「なんだなんだ、どうした急に」
チッチッと舌打ちをするマサハル。
「俺みたいな隠キャがラブレターをもらったらな、真っ先に考えなくちゃいけないことがあるんだよ。それは──」
「それは……?」
やけに神妙な間をとって、マサハルは言った。
「これが、贋作だっていう可能性だ」
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