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「贋作……⁉︎」
そのあまりにも悲しい響きに、ミツオはうっと喉を詰まらせた。直前に飲んでいたコーラの影響では決してない。
「お前、冷静すぎるだろ! そんな恐ろしいこと、よく考えられるな!」
「人生は常にリスクヘッジを考えておくべきなのだよ」
「ああ、そんな難しい言葉まで使って! どうしちまったんだよ、マサハル!」
ミツオはマサハルの肩を掴んで前後に揺らした。
「こんなことはありえない。すべては夢の出来事か、もしくはドッキリ! そうは思わないか?」
マサハルは冷静などではなかった。
彼の虚ろな瞳を見ればそれは一目瞭然だった。
あまりにも現実からかけ離れた出来事に遭遇し、マサハルの脳はゲルマン民族大移動以来のパニックを引き起こしているのだとミツオは悟った。
「そうさ、夢さ! この俺がモテるなんてそんなわけないんだよワハハハハハ!」
「マサハル! 俺が悪かったよ、死ねとか言ってマジごめん! そのラブレターは間違いなくお前のものだよ! だから、正気に戻ってくれ、頼む!」
「いやっ触らないで! これは夢なの、幻覚なの〜っ!!」
ブンブン顔を振って取り乱しているマサハルの胸ぐらを掴み、ミツオは声を張りあげた。
「ばかやろう! もっと自分を信じるんだマサハル!」
マサハルを殴る。ゴッという音がミツオの拳の先で響いた。
「ミツオ……」
殴られた頰をさすりながら、マサハルは涙目でミツオを振り返る。
殴ったミツオの目にもなぜか涙が浮かんでいた。
「お前はいい男だよマサハル! ずっと一緒に育ってきた俺が言うんだから、間違いない! それともお前は俺の言うことまで嘘だって疑うつもりか⁉︎ お前と俺の友情は、そんなもんだったのかーっ!!」
「……お前、そんなにも俺のことを……! ありがとう、友よ!」
「マサハル〜!!」
二人は抱き合って号泣した。その時だ。
「……あのう……」
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