【第一話】魔法の素質

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 桜が雄大に咲き誇り、新しい門出を迎えてくれる季節。  政府高等学校、略して政学に通う事となった僕は家を出た。政学は全寮制で、冷暖房完備のシャワー付き。食事も専用のレストランが用意されているらしい。学費も全て免除されてるので、平凡な僕は少しだけ恐怖を感じる。  政学の校門をくぐると、見覚えのある美女が声を掛けてきた。 「遅かったじゃない、慎吾君。先に自己紹介をさせて貰うね。真鍋美幸(まなべみゆき)、あなたのクラスの担任よ。さあ、教室へ案内するわ」  改めてみると巨乳だ。豊満な胸から目が離せず、気が付くと教室の前に立っていた。教室には机や椅子など見当たらず、ソファーに座っていた男が立ち上がる。 「遅いじゃないか。待ちくたびれたぞ」  インテリ……そうあだ名を付けたくなった容姿は、将来官僚になるだろうと想像してしまう。少しだけ俯き、眼鏡をクイっと上げる仕草はドラマで見るエリートそのものだ。 「紹介するね。武澤和彦(たけざわかずひこ)君よ。中等部から私が教えているの」 「フン……」  同い年のはずなのに、インテリ官僚のイメージが離れない。 「和彦君は、みんなからインテリって呼ばれてるわ」  既に呼ばれていた。 「あっ、美幸先生。遅かったから自販機でジュース買ってきちゃった」  可愛らしい声が聞こえて振返ると、天使かと錯覚するほどの美少女が視界に飛び込んでくる。手には紙パックのおしるこを持っているようだ。自販機に紙パックのおしるこが売っているのか? おしるこをストローで飲むのか? そんな疑問が掻き消されるほど、サラサラの黒髪を舞わせる姿に見惚(みと)れてしまう。 「天野司(あまのつかさ)ちゃんよ。天使の様に可愛いって評判で、みんなからはテンちゃんって呼ばれてるわ。インテリと同じく、中等部からの付き合いよ」 「よろしくねっ」  天使のテンちゃん……激しく同意する。もう、インテリなんてどうでもいい。巨乳と天使だけで十分だ。 「これで全員集まったわ」 「えっ? 三人だけですか?」 「そうよ。選ばれたエリートだからね。さあ、慎吾君も自己紹介して」 「あっ、えっと、柊慎吾です。趣味は音楽鑑賞です。よろしくお願いします」    ……  ……  普通かな? でも、本当の事だから仕方が無い。 「普通ね」 「普通だな」 「普通だよ」  分かっていたが、ちょっとショックだ。
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