38人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
桜が雄大に咲き誇り、新しい門出を迎えてくれる季節。
政府高等学校、略して政学に通う事となった僕は家を出た。政学は全寮制で、冷暖房完備のシャワー付き。食事も専用のレストランが用意されているらしい。学費も全て免除されてるので、平凡な僕は少しだけ恐怖を感じる。
政学の校門をくぐると、見覚えのある美女が声を掛けてきた。
「遅かったじゃない、慎吾君。先に自己紹介をさせて貰うね。真鍋美幸、あなたのクラスの担任よ。さあ、教室へ案内するわ」
改めてみると巨乳だ。豊満な胸から目が離せず、気が付くと教室の前に立っていた。教室には机や椅子など見当たらず、ソファーに座っていた男が立ち上がる。
「遅いじゃないか。待ちくたびれたぞ」
インテリ……そうあだ名を付けたくなった容姿は、将来官僚になるだろうと想像してしまう。少しだけ俯き、眼鏡をクイっと上げる仕草はドラマで見るエリートそのものだ。
「紹介するね。武澤和彦君よ。中等部から私が教えているの」
「フン……」
同い年のはずなのに、インテリ官僚のイメージが離れない。
「和彦君は、みんなからインテリって呼ばれてるわ」
既に呼ばれていた。
「あっ、美幸先生。遅かったから自販機でジュース買ってきちゃった」
可愛らしい声が聞こえて振返ると、天使かと錯覚するほどの美少女が視界に飛び込んでくる。手には紙パックのおしるこを持っているようだ。自販機に紙パックのおしるこが売っているのか? おしるこをストローで飲むのか? そんな疑問が掻き消されるほど、サラサラの黒髪を舞わせる姿に見惚れてしまう。
「天野司ちゃんよ。天使の様に可愛いって評判で、みんなからはテンちゃんって呼ばれてるわ。インテリと同じく、中等部からの付き合いよ」
「よろしくねっ」
天使のテンちゃん……激しく同意する。もう、インテリなんてどうでもいい。巨乳と天使だけで十分だ。
「これで全員集まったわ」
「えっ? 三人だけですか?」
「そうよ。選ばれたエリートだからね。さあ、慎吾君も自己紹介して」
「あっ、えっと、柊慎吾です。趣味は音楽鑑賞です。よろしくお願いします」
……
……
普通かな? でも、本当の事だから仕方が無い。
「普通ね」
「普通だな」
「普通だよ」
分かっていたが、ちょっとショックだ。
最初のコメントを投稿しよう!