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【第七話】美少女は正義
五月になって実家へ帰省し、長期連休を満喫していた。お菓子を食べて漫画を読み、ゴロゴロするだけの素晴らしい毎日。魔法学園での生活は夢だった? そう思えるくらい充実した日々を過ごしている。まあ、巨乳と天使に会えないのは残念だけど。
今日を含めて連休は残り二日。最後までダラダラしよう、そう思っていたのだが……
「お兄ちゃん。明日、買い物に付き合ってよ」
妹が猫なで声を出し、可愛らしく見上げてくる。たぶん、何か欲しいものがあるのだろう。
「何を買って欲しいんだ?」
「別に何も買ってくれなくていいよ」
怪しい。そう思っていると、スマートフォンの画面を見せられた。そこには、アニメグッズ専門店の情報が載っている。
「ここに行きたいの。でも、この辺りは治安が悪いって聞くでしょ? 友達は怖がって来てくれないの。だから、一緒に行こうよ」
なるほど、ボディーガードのようなものか。しかし、近くに治安が悪い場所なんてあったかな?
妹のスマートフォンを取り上げ、詳しい情報を確認する……B地区にある店だった。
「ここは止めておけ」
「えっ? 何で?」
「この地区の住人は狂っている。それに、魔導士とかいう変質者も出るからな」
「魔導士って何? 意味が分からないよ」
まあ、普通はそう思うだろう。こんな理由で引き下がるはずが無い。どうする? 買い物に付き合うのは構わない。でも、魔導士が現れたら……逃げればいいか。インテリやテンちゃんは居ないから無理に戦う必要なんて無いんだ。そもそも、妹には頭から大根が生える魔法なんて見せられない。何を言われるか分かったものじゃないから。
「買い物が終わったらすぐに帰るぞ」
「ありがとう、お兄ちゃん」
そして、次の日。ニコニコ笑顔の妹と一緒に、電車に乗って出かけた。
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