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「今日はイタリアンにしてみたけれど、満足してくれたかな?」
オレンジティーを飲みながら笑顔でうなずくと、ケンさんも満足そうな表情を浮かべた。
「オレは、まだちょっとだけ満足していない」
イタリアンのコース料理、お腹いっぱい堪能したんだけれど。ぽかんとする私をみつめるケンさんが、ひときわ優しいまなざしを見せた。
「あやめちゃんを堪能したい、な」
そんな目で、そんな誘い方をされたら。断れるはずもなく、うなずいていた。身体中が熱くなって、胸が必要以上に高鳴って、苦しいくらいだ。
「ありがとう。飲み終わったら、行こうか?」
早くケンさんに抱きしめてほしくて、紅茶を一気に飲み干すと、席を立った。デートのとき、ケンさんは照れくさいのか、手を繋いでくれない。勤務中にこっそり手を握ってくれることはあるのに。自分から指を絡めたらいいのかもしれないけれど、私からはできない。でも、なぜかラブホに行くと手を繋いでくれる。ぎゅっと手を繋ぐと、胸の鼓動が伝わりそうで、恥ずかしくてたまらない。
適当に、空いている部屋をチョイスし、誰かに合わないうちにエレベーターに乗り込む。全くの他人であっても、ラブホで鉢合わせるのは、なんとなく気まずいものだから。
部屋に入るとすぐに私を抱きしめ、優しいキスをくれる。
今まで何人かの男性と付き合ったことはあったけれど、キスだけでこんなに感じさせてくれる男性は、ケンさんが初めて。とろけるような甘いキスを、何度も何度も繰り返す。思わず漏れるため息。それを合図にそっとベッドに身体を埋めると、またキスの嵐。敏感に反応する身体を、ケンさんの指先が捉える。
「あやめちゃん、感じすぎ……」
耳元で囁かれると、余計に感じる。丁寧な愛撫に反応して、漏れる声。
「かわいい」
みつめ合うと、またキスを繰り返す。さっきとは違う、フレンチキスに心がどんどん乱されていく。
「ケンさん、もっと……」
ケンさんとベッドをともにすると、淫らな自分の一面が恥ずかしいくらいに溢れ出る。私の心も身体も開放してくれるのは、ケンさんしかいない。
「あやめちゃん、気持ちいいよ……」
優しく髪を撫でながら、ぎゅっと手を繋ぎながら、ケンさんがため息のような声でつぶやいた。そうして私たちは、ひとつになれる。ケンさんの愛を、いっぱい受け止めて。
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