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藤春くんの方を見れなくて俯いていると、抱きしめられていた手がゆっくりと離れた。正確には、藤春くんが引き離したのだ。
「アンタどうかしてる。そんなの、ただの洗脳でしかない。縛り付けてるだけだよ」
涙目になった私を、赤と橙の空が照らす。手を引かれた体は、鶯くんからするりと簡単に抜け出した。
動悸がおさまらない。こんな穢れた手を、藤春くんに触らせてしまった。
ハァーーと大きなため息を吐いて、鶯くんがつぶやく。
「呪いを解くためなら、他に代わりなんてたくさんいるだろ?」
藤春くんが答えるより早く、鶯くんは私の足を見て。
「僕には、茉礼しかいない。茉礼を守ってあげられるのは、僕だけなんだ」
「おいで」と手を差し伸べる。下駄の鼻緒で指が擦れていたの、気づいていたみたい。
チラリと藤春くんを見て、「ごめんね」と口を動かす。声には出さないで。
これ以上、藤春くんを巻き込むわけにはいかない。私が感情を押し殺せば、全部解決する。
黙って手を取ると、鶯くんはひょいっと私の体を抱き抱えた。
その時、パシャリと景色が光った。カメラのフラッシュのようなものは、一瞬で消えたけど。辺りを見渡しても、花火を撮影している人どころか、ほとんど人の姿はない。
あの光がなんだったのか、後日思い知ることになるとはーー。
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