10. 夜明けに沈む光たち

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 九月の始まりは、秋の気配がする。学校の花壇にはコスモスが咲き始め、湿っぽい風が吹き付ける。  あの頃と変わらぬ黒髪をなびかせて、彼女は俺の前を通り過ぎた。学校では、挨拶すら交わさない。青砥さんが望むなら、そう徹するまでだ。  朝のショートホームルーム、始業式の最中でも、彼女はちらちらとスマホを気にしていた。自然と目で追えば、いつも前列にいる彼女が目に入る。  困り眉をさらに下げて、足早に校舎を出て行った。少し後ろから、勘付かれないよう追いかける。  今日の青砥さん、なんか様子が変だったから。  駅へ向かうことなく、途中でレンタルした自転車で隣町へ入った。どこへ行くつもりなんだ?  しばらく漕いでたどり着いたのは、人気の少ない倉庫だった。少し前に入って行ったきり、彼女は出てこない。 「……青砥さん?」  歩幅を広げ、猛ダッシュで半開きのシャッターへ駆け込むと、体格の良い男たちが青砥さんを取り囲んでいた。 「藤春……くん?」 「あっれー? 一人で来る約束じゃなかったっけ?」  薄気味悪い笑みを浮かべて、そばにいた男が青砥さんの肩に手を回す。わらわらと七人ほどいるけれど関係ない。沸々と怒りが込み上げて、今にも掴み掛かりそうだ。 「寄ってたかってなにしてんの? その子、離せよ」  とりあえず話しかけてみたけど、聞く耳は持っていないらしい。ニタニタしながら別の男が近づいてきて、俺の髪をクイっと引っ張る。 「君さぁ〜、男の子? キレイな顔傷つけられたくなければ」
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