10. 夜明けに沈む光たち

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「……雪は関係ないやろ! 全部、ウチが勝手にしたことで」 「藤春さん、連帯責任って知ってる? 信頼ってそうゆうとこから失うんだ。じゃないと僕は納得できない」  冷血無情な表情も、この時ばかりは腑に落ちた。俺が彼の立場なら、似たことを言っただろう。  笑っていてほしいのに、俺では君を涙にしてしまう。いつか心まで氷になりそうで、この手で触れることすら怖い。  守るどころか、闇へと連れ去ろうとしているのは、ーー俺の方なのかもしれない。 「……わかった、誓うよ。青砥さんとは関わらない。連絡も取らない。友達は……解消だ」 「ーーゆきっ!」  唇を噛み締めながら、姉が地面へ崩れ落ちた。ダメだと繰り返している。  これほど心配されていたとは、知らなかった。普段はそうゆうところを見せないから。  そういえば、小さい頃はよく俺のことを庇って怪我をしていた。木から降りれなくなった時も、迷子になって泣いていた時も、姉は一番に駆けつけてくれた。昔からこうゆう人だったこと、成長して忘れていた気がする。  床にひざをつけたまま、姉が頭を下げた。まるで土下座をしているかの格好に、場の空気が変わった。憂を帯びた顔で青砥さんが、声をかけようとした時。 「ひとつ、頼みがある。これは藤春家……雪女の末裔の姉として、青砥兄妹(きょうだい)に最初で最後のお願いや」  顔を上げた姉は、一段とキリッとしていた。覚悟を決めた人間とは、こう映るものなのか。 「茉礼ちゃん。弟の髪を切ってください」  静寂とした倉庫に、思いもよらない爆弾が放たれた。
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