11. 鳥籠の鎖は闇に堕ちて

3/12
前へ
/141ページ
次へ
 ーー茉礼を生贄(いけにえ)にするつもりだ。  鶯くんの言葉は虚言でなかったとショックを受けたのか、藤春くんの横顔がとても寂しそうに見えたからなのか。 「そんなの迷信でしょー? 雪女とか作り話じゃん。河童や口裂け女と同じ。ね、雪ちゃん?」  三嶋さんが振り向いて、二人の会話に割り入った。同意を求めるように隣を向くけど、藤春くんは黙っている。  気まずい雰囲気が流れ出して、みんなが思い出したように口を開く。 「そういえば、藤春くん……いきなり碧くなったって言ってたよね、目」  松川さんの言葉に続けて、杉山くんも探るような口調で言う。 「髪の毛もすっげぇ白いな。それ、地毛なんだっけ」  どうしよう。二人とも、なにか勘ぐる様子で藤春くんを見ている。まるで尋問だ。 「は? なに言い出す」 「あっ、ああ……ああ……」  三嶋さんが何か話そうとしていたけど、気づいたら唸っていた。その場でうずくまり、ウーウーと発する。 「えっ、なんなの? 怖いんだけど」  歩道の隅で動かない私を囲んで、みんなが騒ぎ始めた。 「お、お腹……痛い」  息をするように嘘を吐く。私の得意分野。 「えー? こんなとこで? 昼なに食ったの?」  とりあえず休憩しようと、近くにあったバス停のベンチへ座ることになった。さっきまでの張り詰めた空気は消えて、みんないつも通りだ。よかったと、胸を撫で下ろす。  なにか言いたそうな藤春くんと目が合うけど、お互いに顔を背けた。  そばにいられなくてもいいから、あなたには笑っていてほしい。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加