12. 幸せの雫は死を望む

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 くるまったまま黙っていると、布団越しに鶯くんの切ない声が聞こえた。 「ご飯くらい食べな。今日は茉礼の好きなハンバーグだって。朝、母さんが言ってた」  もそもそと、さらに布団の奥へ入り込んで、赤ん坊のように縮こまる。 「明日、生きる……自信がない」  誰からも認められなくて、透明人間でいた頃は、目を瞑っていれば時間は過ぎていた。嫌なことは他人事にして、現実から意識を遠ざけていたら我慢できた。  鶯くんが全てだったから、他の人はどうでもいい。そう言い聞かせて、成り立って来ていたことが、完全に崩れてしまった。  藤春くんに嫌われたくない。他の子に触れてほしくない。たとえ叶わなくても、一緒にいたい。離れれば離れるほど、想いは強くなっていく。  布団が沈み、鶯くんが近づいた。ちょうど頭の上あたりで声がする。 「僕では、茉礼の【すべて】にはなれなかった」  重みがなくなって、凹んだ布団が元通りになっていく。  ……え? おもむろに布団から起き上がると、すでに鶯くんの姿はなかった。ドアは開いたままで、階段を上がる音がする。 「鶯くん?」  さっきの言葉の意味を考えてみるけど、答えは見つからない。  コンコンとノックが響いて、開いたドアから顔がのぞいた。白い髪がチラリと見えて、ドクンと心臓が揺れる。 「藤春……くん?」 「久しぶり」  なぜ彼がここにいるのか。理解できるほど、まだ頭は回らない。気まずそうにしながら、藤春くんが部屋の中へ入ってきた。  乱れたボサボサの髪を手ぐしで整えて、ベッドの上で正座する。よりによって、こんなコンディションの時に会いたくなかった。 「ずっと休んでるのって、俺のせい?」 「え、えっと……」  突き放すような目。できれば関わりたくないという顔をしてる。そんな気がする。 「来てくれって連絡があったんだ。姉伝えに」 「……誰、から?」
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