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『わたしと、友達になってくれない?』
口を開きもしない私に、話しかけてくれて。
『俺は十七の誕生日が来るまでしか生きられない』
誰にも言えない秘密を教えてくれて。
『ずっと、声が聞きたかった』
気づけば、いつもそばにいて、笑ってくれた。
『俺、青砥さんのことが好きなんだ』
まっすぐな気持ちも、必死なところも、
『なんか……運命感じちゃうなーーって』
全部ひっくるめて、愛おしいと思えた。
『ありがとう。これで、友達は解消だね』
見えているものだけが真実とは限らないのに、私は塞ぎ込んで逃げていただけ。
『ずっと休んでるのって、俺のせい?』
最後に残された景色が、あんな冷やかな目だなんて……。なぜ、自分の気持ちを押し殺してまで、離れることを選んでしまったのだろう。
「……やだ、藤春くん。目覚まして。いなくならないで。好き……あなたが、好きなんです」
手を組んで横たわる藤春くんに駆け寄り、手を握る。氷のように硬く、首や頬には亀裂が広がっていた。
タートルネックを着ていたのは、この模様を隠すためだったんだ。
どうして気づかなかったのだろう。気づこうとしなかったんだろう。いつもまっすぐな藤春くんが、私のためについていた嘘に。
「なんでもする。助けられるなら、私をあげるから……お願い……お願いします」
あふれる涙は止まることなく、しがみ付く白い衣装を濡らしていく。
「……もう、手遅れや」
後ろから月さんの声がした。
自分でもわかっている。人形のように硬くなった体に、陶器のような顔。白くて長いまつ毛も、全てが作り物に見える。
藤春くんがすでに息をしていないことくらい、言われなくても一番近くにいる私がよくわかっている。
だけど、諦められなかった。見届けて終わりにしたくなかった。まだ私は、何も返せていない。
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