12. 幸せの雫は死を望む

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『わたしと、友達になってくれない?』  口を開きもしない私に、話しかけてくれて。 『俺は十七の誕生日が来るまでしか生きられない』  誰にも言えない秘密を教えてくれて。 『ずっと、声が聞きたかった』  気づけば、いつもそばにいて、笑ってくれた。 『俺、青砥さんのことが好きなんだ』  まっすぐな気持ちも、必死なところも、 『なんか……運命感じちゃうなーーって』  全部ひっくるめて、愛おしいと思えた。 『ありがとう。これで、友達は解消だね』  見えているものだけが真実とは限らないのに、私は塞ぎ込んで逃げていただけ。 『ずっと休んでるのって、俺のせい?』  最後に残された景色が、あんな冷やかな目だなんて……。なぜ、自分の気持ちを押し殺してまで、離れることを選んでしまったのだろう。 「……やだ、藤春くん。目覚まして。いなくならないで。好き……あなたが、好きなんです」  手を組んで横たわる藤春くんに駆け寄り、手を握る。氷のように硬く、首や頬には亀裂が広がっていた。  タートルネックを着ていたのは、この模様を隠すためだったんだ。  どうして気づかなかったのだろう。気づこうとしなかったんだろう。いつもまっすぐな藤春くんが、私のためについていた嘘に。 「なんでもする。助けられるなら、私をあげるから……お願い……お願いします」  あふれる涙は止まることなく、しがみ付く白い衣装を濡らしていく。 「……もう、手遅れや」  後ろから月さんの声がした。  自分でもわかっている。人形のように硬くなった体に、陶器のような顔。白くて長いまつ毛も、全てが作り物に見える。  藤春くんがすでに息をしていないことくらい、言われなくても一番近くにいる私がよくわかっている。  だけど、諦められなかった。見届けて終わりにしたくなかった。まだ私は、何も返せていない。
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