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温かい食事が終わると、いつも決まって鶯くんの部屋へ行く。白と黒の統一感ある配色。すっきり整頓されている本棚。ここで勉強を教えてもらうのが私の日課。
頭の良い鶯くんは、県内トップの高校へ通っている。
中学時代は、整った容姿とクールな性格から、女子に憧れの眼差しを向けられる事も多かった。
きっと、欲しいものはなんでも手に入るような人なんだろうと、心のどこかで思っている。
彼は自慢の兄であり、尊敬する存在、そして私が長年淡い想いを寄せている相手でもある。
それでいて……
「良く出来たね。茉礼は僕の自慢の妹だ」
背後から不意打ちに抱きしめられて、私の体は氷のように固まって動けなくなった。
ほら、こうして私に甘い飴を与えてくれるの。
椅子がギシッと音を立て、更に胸が苦しくなる。
褒めて欲しくて、認めてもらいたいが為に頑張れる。そう思うようになったのは、きっと小学三年生の頃から。
クラスで嫌がらせを受けていた私を助けてくれたのが鶯くんだった。
いじめのきっかけは、なんでも良かったんだと思う。理由は、なんとなくその子たちの気に障ったから。
無視されたり、上履きや教科書を隠された。人格を否定するような暴言を吐かれて、家でこっそり泣いていた時、鶯くんがそっと言ったの。
『ぼくがいるから大丈夫だよ。良く頑張ったね 』 って。
なぜなのか、苛めっ子達は手のひらを返すように大人しくなった。
その時から、鶯くんは私のヒーローであり、救世主なの。
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