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第40話
「お前は後回しだ」
厭離王はそう云った。
槙島は喚いて逃げ出した。厭離王は隠し持っていたマッチ箱を取り出し火を点し、火のついたマッチを箱に戻し、逃げる槙島の背中目掛け放った。
槙島が炎上した。
燃え盛る槙島は言葉にならない叫びをあげた。
「これは面白い!」
厭離王は喜んだ。
「私は人の怯えた顔、落胆した顔、絶望した顔を見るのが大好きなのだ!」
琴子は叫んだ。
怖ろしい。目の前で炎に包まれているのは人間だ。何もできない、せめて苦しまないようにしてやることぐらいしかできない。
ライフルを構え、炎に巻かれ悶え苦しむ槙島に狙いを定めた。
呻き声が耳に絡む。撃て、撃って、苦しみから解放してやれ。
「できないっ!」
厭離王はさらに笑った。本当に愉快そうだ。
槙島はあろうことか琴子に向かって突進してきた。もう目が見えていないのかもしれない、琴子を巻き添えにしようとしているのかもしれない。
「た、助けてっ、高明……」
現れたのは首なしライダーだった。
執拗なる魔界の住人に琴子は無慈悲に撥ね飛ばされた。
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