第6話

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第6話

 運命に抗うつもりがないのなら、最初からヤナギタの提案に乗らなければよかっただけだ。  琴子は喚くような大声をあげて、闇雲に掴んだものを引っ張った。 「嘘……」  引き寄せたのは枯れ尾花。所詮はこんなものか。どれだけ変えたいと願っても叶わないものがある。 「私はいっつもそう!」  鵺の牙が迫る。涎。熱い吐息。肩に血が滲む。痛い。痛いのは嫌だ、痛いのは怖い。  殴られるのは怖かった。だけど父に褒められたくて、好きでもない射撃を続けた。いつの間にかそれしかなくなっている自分に気づいたのはクラスの皆が大学進学や就職のことを考えはじめた頃。  痛い!  早く殺して!  不意に肩に掛かっていた力が緩んだ。  琴子は固く閉じていた瞼を開けると、鵺の首がごとりと落ちた。 「うわ、うわあああっ!」  琴子は女子らしく叫べない。  刀を持った青年が立っていた。  更なる耳を劈く銃声に琴子は重ねて豪快な悲鳴を上げた。もう一人、いや二人。 「だ、誰?」  刀を鞘にしまいながら青年は琴子を見る。切れ長の目と細面。やや扱けた頬。  サブマシンガンで鵺に止めを刺した一人が早口でマキシマ、マキシマと連呼した。 「俺、槙島ね。で、こいつが魏屋」 「ま、マキシマさんにギヤさん?」  鵺が起き上がってこないのを確認し、刀の青年も自己紹介した。 「僕は寒立といいます」  琴子は唖然としながら、寒立の差し出した腕の意味を理解し、その手を握り立たせてもらった。 「む、村雨琴子です。あ、あのこれは一体……あなたたちはに、人間?」 「そう、僕たちは人間。多分あなたと同じようにあの黒服の男、ヤナギタに声を掛けられてここに来た。魔物を倒せとね。けど、シビアすぎる。五十日弱で魔物百匹なんて、いくら銃だのなんだの用意されたところで相当な難題だ」  その言葉を受けたのは早口の槙島だった。 「だから俺らはチームで動くことにした。チーム。三人でチーム組んで兎に角じゃんじゃん魔物を倒す!」  合理的な考え方のようだが、最後の百匹目を最初に倒すのは誰なのか、また最後に一人残って百匹目を倒すのは誰なのか。琴子は呆けたように口を開けたまま、ただ頷いた。  寒立は少しはにかんだように云う。 「琴子さんもチームに入りませんか?」
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