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第7話
寒立は革のパンツの尻ポケットから紙切れを取り出し、仲間二人に見せた。
「悪い、とどめは僕だった」
そりゃそうだと槙島が答える。
琴子も貰ったあのスタンプカードだ。寒立のそれには既に二十から三十、判のようなものが捺されていた。そういう仕組みだったかと琴子は納得する。
チームリーダーだろう寒立は刀とサブマシンガン。槙島は両手にサブマシンガン、背中に火炎放射器。小柄で可愛い顔をした魏屋もサブマシンガンを持ち、数十本の投げナイフを装備している。
「あ、あんたはヤナギタになにもらったの? あれ、あそこにあるやつ? ら、ライフル?」
槙島は斜面に落ちたライフルまで駆け寄り、それを拾い上げた。
「お、重っ! あんた女のくせになんでこんな重いもん選んだの? 馬鹿なの? 早死にしたいの?」
矢継ぎ早に捲し立てられてもと、琴子は困る。二十年以上も前に至極頻繁に手にしていた、それだけの理由で選んだものだ。
魏屋は退屈そうに鵺の死骸にナイフを投げては突き刺す。
槙島がやや苛立ったような声をあげた。
「どうすんの、来んの? 来ないの?」
槙島の刺々しい言葉に苦笑いしながら、寒立は一緒に来てくれるのなら心強いと云った。
「そうかあ? こんな糞重い。これってSVLKだろ?」
「すごい銃なのか、槙島」
「超長距離狙撃銃。遠くから獲物を狩るにはいいんだろうよ。けど、取り回しは良くないし、だいたいチーム戦向きじゃねえ」
そうかと寒立は尖った顎をさすった。
「あの、」
時代にばらつきこそあるが日本でよく見る家屋が立ち並んでいる。しかしここは間違いなく琴子が過ごしてきた世界ではない。ヤナギタはこの世界を重なった地図と表現したが、どちらが影響を与えたものかそれともどちらもそれなりの時間を経過してこの姿となったのか将又偶然の一致か。
ぐうと琴子の腹が鳴った。
「どうします、村雨さん。一緒に来てもらえますか?」
「早く決めろよ、知っての通り時間がないんだ」
恐怖感を和らげるためには徒党を組むのは大いに有りだろうが、相手は若い男の三人組だ。右も左もわからない世界で依存していいものか。
「仲間にしてやるって云ってんだから黙ってついて来りゃいいだろ、おばさん」
琴子の地獄行きまで、あと四十九日。
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