第8話

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第8話

 獣とも人とも知れない魔物を倒すのに、確かにサブマシンガンの乱射はよく効いた。  寒立らは三人でぐるぐるまわり、スタンプカードに捺されていく判を見て三人均等になるようバランスをとりながら、更に数匹の魔物を狩った。琴子は彼らについて行くだけで精いっぱいで、未だただの一匹も倒せずにいる。それでも無理矢理ついて行ったお陰で、この世界のことを随分と知ることができた。 「村雨さん、お腹空きませんか」  大いに減っている。魔界に堕ちて丸二日何も食べていない。琴子が頷くと寒立は周りを見渡した。首に浮く筋が綺麗だと琴子は余計なことを考える。 「食べなくては動けない。仮の命でも腹は減るんです」  寒立は木造モルタル造りの一昔前の家屋を見定め、そのドアを慎重に開けた。 「よし、留守だ」  寒立は槙島と魏屋に合図を送る。槙島が急に振り向き早口で云った。 「せめて見張りだけでも役に立てよ」  薄暗い室内は壁と云わず天井と云わずかさかさに乾いたお札が張ってある。  仏壇に位牌。壁掛けの時計にカレンダー。書かれている文字は読めない。寒立は留守だと云った。ならばこの家には住人がいると云うことだ。  琴子は玄関口に立ち、あたりに注意を配った。見張っていろと云われた以上、動くわけにもいかない。  しばらくして戻ってきた三人は、手に手に缶詰だの菓子だの果物だのを持っていた。 「こ、ここには誰が住んでいるんですか?」 「知るかよ。ここは魔界なんだから、魔物が住んでるに決まってんだろ」  家屋から離れ、寒立は林檎を齧りながら空を見ている。 「雨が降りそうだな」  魏屋は缶詰の中身を食らい、槙島は菓子を頬張った。残ったものを勝手に食えと云うことなのだろうが、琴子は気後れしてしまい手を出せずにいる。 「食わねえなら全部食うぞ」  琴子は寒立を見た。 「村雨さん」 「は、はい」 「生き返りたいなら割り切ることだ」
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