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肉を食わせる女
「みなさん、初めまして。朝日奈エミと言います。小声でごめんなさい。しかもトイレの中から失礼します。いまね、ボスの目を盗んでICレコーダーに声を吹き込んでいます。監視が厳しいので、こんな場所でしかお話ができないんです!」
「実は私、ボスの活躍を記録に残すことにしました。すごい人なんですよ。ユウさん、あっ、ボスの名前です。ユウさんの活躍を記録しておいて、あとで誰かに小説にしてもらおうと思っているんですよ。印税で高飛びしようとか、豊胸手術を受けようとか、そんなことを考えているわけではないんです。ただ、ただ、ユウさんの偉業をみなさんに伝えたいだけなんです。本当ですよ」
「ユウさんは何者かって?それを言ったらネタバレになってしまうけど、警察関係とだけお伝えしておきますね。超イケメンのお兄様がいて、トモヒトさんて言うんですけどね、そのお兄様の指示でいろいろな事件を捜査しています。あれ、話しすぎかな。美人で頭脳明晰、格闘技も得意なんですよ。すごいでしょ?」
「欠点はないのかって?よくぞ聞いてくれました!はっきり言って欠点だらけです。陰険でいじわる、暴力も振るいますよ。いつだったか私がうっかりミスしちゃったんです。たいしたミスじゃないんですよ。なのに、逆さづりにされましたから。ひどいでしょ。犯罪者をつかまえる仕事をしている人が犯罪を犯しているんですよ、信じられませんよねえ。でもね、最近は反省したみたいで、ヘッドロックくらいで許してくれます。すこしは優しいところもあるんです。涙もろいですしね。ふふっ」
「ユウさんといっしょにいると、いろいろ勉強になるので、これからも助手を続けていくつもりです。あっ、トモヒトさんのお嫁さんになったら辞めますよ!それまでは辞めないという意味です。結婚の時期ですか?それが問題なんです。なかなか振り向いてもらえなくて。自慢するわけではありませんが、私、結構、可愛いいと思うんですよ。ユウさんに相談しても、いつもやめとけって言われるんです…理由はよくわかりません」
「話が脱線しちゃいましたね。ごめんなさい。いまは山奥で働いているんです。どんな事件かって?それは解決するまで言えないんですよ。ですから、解決済みの事件から順番にご紹介しますね。あっ、たいへん!ボスが呼んでます!かなり不機嫌そうです。もう行かないと。またヘッドロックされちゃう。あれ痛いんですよ、とても。では、前置きはこれくらいにして事件の紹介に移りましょうね。事件についてはもう吹き込んであるんです。昨夜は徹夜でした。おかげで寝不足なんですけど、居眠りしないようにがんばってきますね。では、では、どうぞ、お楽しみください!」
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