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「あのぶつかった時がやっぱり、印象的でした。あんなに混雑していたのに私の散らばった小物を踏まれないように拾ってくださって…優しい方なんだって」
「そういう木下さんも気になってくれているって言ってくれましたよね。木下さんもその時ですか?」運命を感じるとでも言うのだろうか。ちょっと笑える。本当ならこんな感じで恋が芽生えるのだろうか。
「いえ、僕は去年の夏くらいですかね?」
意外な事を言う。去年の夏?私は何をしてたっけ?
「去年の夏ですか?何かありましたっけ?」
「いえ、特別何もありませんでしたが…よく駅で見かけたので」
「駅でですか?」
「はい、ただ待っている姿なんですけどね。さっき言っていた歳上の方とよく会ってたじゃないですか?羨ましく感じてましたよ。僕も歳をとっても、こんな綺麗な人と仲良くしたいなぁって思いまして」
情報の受け渡しの事だ。まるまる見られている。盲点だった。駅では会社の上司と部下にしか見えなかったはずだ。仲良く話しているとも思っていない。おそらくUSBを交換している時に手を繋いでいるように見えたのかも知れない。
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