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進学した高校も同じだった。
同じ中学から進学したヤツは他にも何人か居たけど、栄とはクラスも一緒だった。名前が同じで紛らわしいんだからクラス替えも気を遣えばいいのに、とは思った。
でも、何となく嬉しかったのを覚えている。アイツのことは嫌いじゃなかった。
オレは高校でもサッカー部に入って、青春に明け暮れるつもりだった。
「なあ、自分も1年やんな?」
入部して練習が始まって、スパイクの紐を結び直していると、痩せ型で背の高いメガネと、どっしりした体型の二人組に声をかけられた。
「おお、何?」
返事をするとオレの運動着の胸元をじっと見ながら確認してくる。
「ミツヤやんな? 大東中の」
大東中、というのはオレの卒業した中学の略称だ。
「そうやけど……」
返事をすると二人組はやっぱりと笑って、
「2年の夏に、万博のグランドで試合したん覚えてない?」
中学2年生の夏にした、いくつかの他校との交流試合。大阪の万博記念公園で行われたそれは、オレが人生で初めてハットトリックを決めた試合だった。
「自分、ハットトリックしたやろ?」
うなずくと、眼鏡をかけた方が唇を突き出して、自分を指さす。
「あん時のキーパー、俺。蟹江」
続いて、どっしりした体型の男が同じように自分を指さす。
「ほんで、ゴール前で抜かれまくったんが、おれ。大治」
笑ってしまった。そんなに堂々と、自分たちが負けた過去を話されるとは思わなくて。
「ああ、そうやったんや。同じ高校って偶然やな」
そう返すと、蟹江と名乗った男は中指と薬指で眼鏡を押し上げて、
「同じチームやけど、今度は負けへんから。レギュラー争いとか」
と言ってきた。ポジションは違ったが、いつ入れ替わるとも分からない。
「おれも」
大治もそう言って、ふん、と鼻から息を吐いた。それから黙って、胸の高さに拳を出してくる。
「分かった。ええよ、オレも負けへん」
そう言い返して、蟹江と三人で、拳を突き合わせた。
こうして、蟹江と大治と知り合った。
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