1-1 ハロー/はじめまして

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それはたしか5月頃で、昼休みにめずらしく栄が教室に居たから、一緒に屋上に上がって、4人で昼メシを食べていた。 サッカー部3人に囲まれて、栄はなぜ自分が呼ばれているのか分からないような様子だった。だから、放送部の話を色々聞いていた。 「昼休みの放送、だいたい栄の声やもんな」 「人数少ないねんもん……サッカー部と違って」 サッカー部は何十人といて、厳しい練習に耐えて残って、試合に出るには更にその中から選ばれる必要があった。 少し寂しそうな栄に、羨ましいのかと思って 「栄もサッカー部、入る?」 そう訊ねると、 「いや、もっと人数減るっちゅーねん」 いつもの大人しい感じとは違う、勢いのある口調で返されてしまった。 3人ともサッカー部なので、普段ふれあう事のない放送部の内情もめずらしくて、さらに色々聞いた。 「発声練習くらいはするけど、決まった文章読み上げるだけやし。好きな曲かけれるし、楽やと思う」 「曲も栄が選んでんの?」 「毎日ちゃうで。少ない人数でローテーションしてる」 基本的に栄は質問に対して答えるだけで、自分からはあんまりアレコレ話さないタイプだった。 中学の同級生に聞いたけど、と蟹江が眼鏡を押し上げる。 「放送部にもコンテストあるって聞いたで」 それを聞いて、何にも想像がつかなかったオレが、 「えっ? 何を競うん? 読み上げの速さ?」 と聞くと蟹江は栄のほうを見て、 「何かドラマ作ったりしてるんちゃうの?」 と質問を流した。けれど栄は首を横に振って、 「やる気ある所はやってはるんやろうなぁ。うちの学校にはカメラもないから……」
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