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窮地
オレに与えられたドームには、本当に何もなかった。
カレンダーも、時計もない。今日が何日で、今が何時なのかも分からない。
だから大事な『2週間後』を間違えないよう、部屋の片隅に外から持ち込んだ砂粒をひとつ置いてある。これが14個揃ったら、『生還』なのだ。……いや『凱旋』かな。
いくら断熱が効いているとはいえ、陽が高くなってくるとドームの中もじんわり蒸してくる。
だが、極力汗はかきたくない。貴重な水分だからな。
室温が何度か知りたいが、そんなものは装備されていない。
腹も減るし、喉も渇くが、地味にダメージがくるのが『退屈』だった。
話し相手やケンカ相手もいなければ、独房に毎朝届けられたような新聞もない。当然、パソコンやスマホもなければテレビやラジオすらない。うたた寝にも飽きてじっと周りを渡すが、寝る前と何ひとつ変化はなかった。
じっと待っていても何も始まらないし、何も変わっていかない。
多分、2週間の間、ずっとこんな調子なんだろう。
居心地の悪い、不気味なほどの孤独……。
孤独……?
ふと思い立ち、オレはそっと身体を持ち上げた。もしも『調べる』としたら今しかあるまい。2週間後に立ち上がってウロウロする体力気力が残っているとは到底思えないからだ。
そしてオレは、この半径2メートルほどの小さな『小屋』の壁を隈なく調べ始めた。
何処かに、何かあるんじゃないのか……と。
例えばオレが早々に死んだ場合などに備えて、監視カメラだとか盗聴器があってもおかしくはない。
これだけ厚みのある壁なんだから、その間にバッテリーを仕込む事だって可能だろう。そうすれば、中の様子を送信する事だって容易なはずだ。
細心の注意を払い、じっくりと鉄板の継ぎ目や反響音の違いに神経を尖らせる。何しろ、時間だけはたっぷりとあるのだから。
そして飽きるほどに時間を掛け、何回もチェックしたが……結果は『何もなかった』。
何処をどう見てもカメラどころかマイクも見つからなかったが、『それでも』と思い、オレは夜になってからドームの外に出て外部を詳しく探してみた。
だが外部にも、密かに期待したアンテナや太陽光パネルのような『意図』を見つける事は出来なかった。
「見ていないのかよ……」
呆然と呟いた。
そう……オレは今、完全に『孤立』しているのだ。
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