僕の手に光

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 ある夜、お母さんは具合が悪くなったみたいだった。  お父さんは僕に外へ出ていてほしいと言われ、僕は一人で夜の広場へ来た。  なにげなく夜空に向かって手を伸ばすと、いきなり何かを掴んだ。  見てみると赤い宝石だった。それはチカチカとまぶしく光る。 「なんだろう…なんだか少し温かい…」  ぎゅっと握ると、チカチカは早くなった。 「君」  いきなり、全身黒い服を着た男の人が僕に声を掛けてきた。 「それは私の宝石なんだよ…。返してくれるね…?」  なんだか変な感じがした。  なぜかはわからないけれど、渡しちゃいけない気がした。  これはおじさんのじゃない、よく分からないけれどそう思った。 「…!」  僕はあとずさって、宝石を落とさないように握りしめたまま急いで走り出した。 「待てっ!!」  おじさんは僕を追いかけて来る。  家まで帰ればお父さんとお母さんがいるはず。だから家まで一生懸命に走った。  なぜか僕は、二人とも僕が盗んだんじゃないってわかってくれる気がした。だから、ありのまま話そう、そう思いながら。  しばらくして家の近くで振り返ると、おじさんは悔しそうにして行ってしまった。  家につくと、赤ちゃんの泣き声が聞こえた。  知らない女の人がお母さんのそばにいて様子を見ている。  お父さんは帰ってきた僕に気付いた。 「お帰り!産まれたぞ、お前の妹だ!」  お父さんも、ベッドに横になっているお母さんも、すごく嬉しそうだった。 「わあ…!」  僕はさっきのことも忘れて、お包みに包まれて差し出されたその赤ちゃんの体に恐る恐る手をやった。 (あ…) うまく言えないけれど、さっきの宝石と同じ感じがした。  きっと宝石はこの子だ、僕はそう思った。  僕がポケットにしまったはずの宝石はいつの間にか無くなっていた。  空から落ちてきた宝石を自分のだと言った、あのおじさんは何者だったんだろう?  もし、あのおじさんにあの宝石を渡していたら、この僕の妹は僕の家に今日ちゃんと来ただろうか…?  窓から見える夜空をチラッと見て、僕はそう思った。
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