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「え、タイムマシンで──っつうことは、つまり未来人」
「ま、そうなるよね」
「じゃあ、みんなが幽霊と思ってるのは──」
「そ、思いこみ。その証拠に、幽霊ってかならず映像としてしか姿をあらわさないでしょ。たまに声が聴こえるケースもあるけどさ、基本的には半透明なホログラムみたいな存在」
あ然としているぼくに、得意げにハカセは新説を解説する。
「それが何よりの証明。幽霊みたいな存在なら、できるだけ干渉しなくてすむし、タイムパラドックスも起こらない」
「カンショウ？ パラドックス？」
「そう遠くない未来、ついにタイムマシンが発明されて大勢の人がタイムトラヴェルをたのしむ時代になってる、きっと。でもそのためにはルールがあるし──っていうか、たぶん原理的にできることできないことがある」
「ルール──って、タイムスリップの？」
「けっこう前から科学的にはもう原理上タイムトラヴェルは可能らしいんだけどさ、いくつか問題点も指摘されてるんだよね。そのひとつが有名な、親殺しのパラドックス」
「えらく物騒な話だなあ」
「ユウマがもし、タイムマシンに乗って過去へ行ったとするでしょ」
ふんふんとぼくは首を縦に振る。
「で、仮に、ユウマが知らないで自分の親を殺してしまったとする」
「いやいや。そんなことしないし」
「や、だから仮にの、もしもの話だから。なんか、何でもいいけど特殊な事情があってか、そんなことになったとしたらだから」
「いや、だから、そんなことぜったいしないっつうの」
「ったく、オス馬の耳に念仏か」
「うるせえ」
「直じゃなくてもいい、不可抗力で連鎖して結果的にでも。タイムスリップしたユウマが、過去の時点で自分の親を殺してしまったとしたら、その後ユウマは生まれてこなくなってしまう」
「ん？ ちょいややこしいな」
「つまりさ、単純な話、過去へタイムスリップして親を殺してしまったら自分が生まれなくなる、でも親を殺したのは未来からやってきた自分だから、歴史が変わって親が自分を生むことがなくなってしまえば、タイムマシンに乗って自分が親を殺しに行くこともない、でもそれだとやっぱり──って堂々巡りしちゃうのが、ようするに有名なタイムパラドックスのひとつってわけ」
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