その前日

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「やっぱ、ややこしいじゃないか」  頭んなかが少々こんがらがった。 「で、パラドックスを回避するために、未来人が過去へ行っていたずらに歴史を変えてしまわないためにも、タイムスリップは、した先でまったく干渉することができないルールまたは原理になってるってわけ」 「ん……なんとなく、わかったような、わからないような」 「過去の事象に干渉できない、簡単にいうと、タイムスリップしてもその行った先の世界で人と会話したり物にふれたり、ちょくせつ影響をあたえるようなことはできないってこと。ようはタイムトラヴェルできても、人間は観測することしかできない(、、、、、、、、、、、、、、、)ってこと」 「せっかくタイムスリップしたのに、ただ見てるだけってなんかつまんないな」 「そ、傍観者としてしか存在できない。最先端の宇宙物理学でも人間原理ってのがあるぐらいだから、ある意味すごく理にかなってるんだけどね」 「それで、かんじんのタイムマシンはいったいどんななの?」 「うーん、そうだなあ。たとえば、近い将来、コンピュータがもっと飛躍的にすんごく発達してタイムマシンのアプリ(、、、、、、、、、、)ができる、とか」 「アプリって?」 「アプリケーション。目的に応じてつくられたプログラム・ソフトウェアのこと。たぶん、だけど、まさにそう遠くない未来、携帯電話(ケータイ)に便利なアプリが入ってて、みんながふつうにそれをもってて、ふつうにつかってる時代がくる」  そのあとも、インターネットがどうのこうの、相対性理論と量子力学がどうのこうのと、こむずかしい話を聞かされたものの、ぼくには、時空を越えた幽体離脱みたいなもんか、としかイメージがわかなかった。  まさか、ほんとうにタイムスリップできるなんて──。
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