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「足、怪我してんの?」
「ああ、ちょっとだけ骨やっちゃって。まだボルト入ってるんだよね。」
—骨やっちゃって?
「そんなんで部活やってて大丈夫なのかよ。」
「うん、まぁ医者の先生も軽くなら練習してもいいって言ってるし。」
そう言って絢香は何事も無いかのような笑顔を見せる。
痛くないのだろうか?
彼女の脚に入っている金属のボルトがどんなものなのか、想像もつかない。
彼女の直向きな強さが羨ましかった。
「あのさ。」
「ん?」
また目があって透き通った瞳に吸い込まれそうになる。前髪が揺れて彼女の匂いが鼻先をかすめた・・気がした。
—どうしてそんなに頑張れる?
とは聞けなかった。なんだか恥ずかしくて。
「いつも、ウォークマン何聞いてんの?」
なんだこのクソみたいな質問は。
「え、ああ。Nirvanaって知ってる?」
Nirvana・・なかなか渋いところをつく。ヴォーカリストが自殺したいわくつきのロックバンド。
「う、うん。名前だけは聞いた事あるかも。自殺した人だっけ。」
こんな他愛ない会話でも緊張してしまう。子供の頃は散々一緒に遊んだのに。
「まあね。そう言うとなんか暗い感じするけどけっこうテンション高めの曲も多いよ。」
そう言って彼女は肩から提げた重そうなスポーツバッグを持ち直し、ややくたびれたクマのプーさんのストラップが揺れた。可愛い趣味だな。
「大丈夫?荷物持とうか。」
手を差し伸べるが絢香はやんわりと断る。
「大丈夫だよ。もう慣れてるから。ありがと。」
そう言ってまた刻まれる深い笑窪。
彼女の直向きな強さが羨ましかった。
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