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第5夜:紅羽の過去③
※性的虐待を連想、レイプ、その他暴力敵表現要注意※
父親からの性的虐待は1年ほど続いた。
真生は友達もいないし学校の先生にもそんな相談出来るはずもなかった。児童相談所は信用出来ないと決めつけているため、誰にも頼ることなくただ耐えるだけだった。
抵抗をしなければ早く終わるからと父親の言うことはなんでも聞いた。
そうしていれば父親も機嫌よく、無茶な要求はしてこなかったからだ。
ある日、父親は少し長く出張に行くことが決まった。
真生は心から安心して、怯えることなく過ごせる事を喜んだ。
「確か1週間位って言ってたよな……」
布団に横になりながらカレンダーを見る。1週間なんてあっという間で、もう4日目が終わろうとしていた。
またあの日々が始まるのかと思うと正直逃げ出したい気持ちになった。だが、行く宛てもない。
働ける年齢になるまではあと少し、我慢するしか無かった。
そんなことを考えていると玄関のチャイムが鳴り響いた。
ーピンポーンー
「こんな時間に誰だ?」
時計を見ると夜の22時を少し回った所だった。
「はーい。」
近所の人が回覧板でも回しに来たのかと玄関を開ける。
「え?誰?」
玄関先には見た事のない男が数人立っていた。30半ばくらいのガタイのいい男達。どう考えても父親の知り合いでは無さそうだ。
「西嶋真生くん?」
「そうですけど……」
「オレ達ねぇ、君のお父さんの知り合いなんだけどさぁ。君のお父さん、オレ達にお金借りてるんだよね。」
「え……は?」
この一言だけでこの人たちがどういう人なのかすぐに予想ができた。
「だからね、オレ達にお金借りてんの。それも結構な額。」
「はぁ……それで、俺となんの関係があるの?」
「いや、それがさぁ。君のお父さんと連絡取れなくてさぁ。」
「父は昨日から出張に行くって言ってましたけど……。」
「出張?そんな話きいてないなぁ。」
「まさか……逃げた、とか?」
そんなまさかと真生は一瞬で不安に襲われた。足が震え始め、立っているのがやっとの状態。俯いて何も言えずに居ると間髪入れずに男達が話し始める。
「だとしたら、お金返してもらえないなぁ。」
「でもそれって……俺には関係ないですよね……」
震える声で尋ねるもやはり答えは期待したものとは真逆だった。
「いや、それがさぁ。もしもの時は息子にって話だったんだよね。」
男達はニヤニヤしながら真生を頭のてっぺんからつま先まで舐める様に見定めるような眼差しを送る。
「な、に……」
「お父さんの借金いくらだったかなぁ……。」
「あー5000万くらい?」
「それに、利子とか色々つくからそれなり?」
なんだその額は……。どうしてそうなった?借金?それを自分が肩代わり?何故そんなに借金があるんだ?意味がわからなすぎると真生の頭の中は混乱した。
呆然としてしまい何も言葉が出てこなかった。どうやら父親はギャンブルに手を染めていたらしい。あんな真面目そうにしていながら、ギャンブルで多額の借金を背負ったとこの男達は話した。
「ところでさぁ、真生くんはどうやってお金返してくれる?」
「お金なんて……ありません。」
当たり前だ、まだ働けもしない中学生なのだから。返せる宛なんておもいてくはずもなかった。
「俺まだ中学生だし……働けない……」
「ふーん、そう。じゃぁお兄さん達がお金稼ぐいい方法教えてあげるよ。君にだけ特別、ね?」
この時に何故変だと思わなかったのか……父親の借金、所在不明で混乱して何を言われても考える程の余裕がなかったのだ。
「とりあえず、俺達とおいで。いい仕事紹介するから。」
「任せなよ。」
「……。」
不安ばかりが大きくなって行く。少し考えればダメだとすぐ分かるのに、今はこの人らの言う通りにするしかないのだ。父親はおろか、親戚ですら頼れる人は居ない。
俯きながら男達の後ろを着いて歩く。少し歩いた先に車が止まっていて乗るように促す。
大人しく言うことをきき、車に乗り込む。その車は内側から窓ガラスに加工を施してあり外から中が見えないようになっていた。
また、運転席と後部座席の間にもカーテンがあってこれも見えないようになっていた。
普通の車ではないのは一目でわかった。乗り込んですぐ、車は動き始めた。どこに向かうのかわからずにまた不安になる。
聞いてみると着けば分かると言われ真生はそれ以上の詮索を出来なかった。
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