34人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
第5夜:詮索
今日もBARには要の姿があった。
要は紅羽の事が気になって玲なら何かわかるのではと思い足繁く通うようになった。
「玲さんやっぱりなんも知らないの?」
「そうねぇ、あんまり自分の事話さない子だから聞いても答えてくれないのよ。」
誕生日や血液型なんかは分かったが肝心の趣味や特技、仕事の事など詳しくはわからないらしい。
ついこの前、紅羽の自宅に招かれた時に見てしまった年齢についてはれいに尋ねていいものかと頭を悩ませる。
「結構若く見えるよね。でもここに出入りしてるって事は20歳は超えてるんだよね?」
「そうねぇ……。」
カマかけるつもりで年齢を聞いてみた。何となく言葉を濁す玲。
「仕事とか何してんだろう……」
ポソっと呟く。
「んー、接客業みたいな物かしら。なんか、お金は貯めないといけないみたいな事は言ってたわ。」
「ふーん。」
「あら、お酒無くなりそうね。何か作りましょうか?」
「あ、じゃぁ同じのを。」
「了解。」
話をはぐらかされてしまい、それ以上の事を玲に聞くことは出来なくなってしまった。
新しいカクテルが目の前に置かれた所で後ろから聞き覚えのある名前が聞こえてきた。
「昨日実はさ〜、ようやく紅羽指名出来たんだよ。」
「え、マジ!?あの紅羽かよ。」
「そうそう、噂通りの超美人。しかも俺好みのツンデレ具合でさぁ〜、フェラとかすっげぇ上手くてマジ、勃起治まらなかったんだよなぁ。」
「はぁ〜羨ましい。俺も1度お相手願いたいわ〜。」
何となく聞き耳を立てていると指名だのプレイだのといった単語が聞こえた。
「そういえば……」
この前も男に絡まれてる時相性がどうのとか言ってたなと要は思い出した。
さっきの会話から推測し、すぐに携帯で『紅羽 指名』と打ち込んで検索をかける。
Webページには『貴方の夢 叶えます』とうたわれた男性専用のデリヘルのホームページだった。そこにはしっかり紅羽の名前と写真が載っていて、そこで初めて要は紅羽のやっている事を知った。
「ねぇ、玲さん……紅羽って……」
「アラ、分かっちゃった?あの子はね、性を仕事にしている子よ。でもそのお店はちゃんとしてる所みたい。私も1度は止めたんだけどね、どうしてもって聞かないからあんまり口うるさく言うのはやめたのよ。」
「ふーん……」
何となく料金プランや店の詳細をそのまま確認する要。
予約をするには先ず入会金という物が必要らしい。そして、指名するには専用ページへアクセスして希望のキャストと日程、ある程度のプレイを指示するものになっていた。
要は試しに紅羽を指名してみることにした。
3週間先まで予約はいっぱいとなっていた。こんなにも人気なのかと驚くと同時に、他のキャストとは値段設定が異なっていた。
プレミアム会員になれば優先的に予約が取れるようだが、それになる為にはかなり金を要した。
「すげぇな……」
金のためとは言え、この仕事をしているなんてどうしてそんなにお金が必要なのか、なぜこの仕事なのか、危険な目にも合うし嫌な事も多いだろう。そんな事を考えていたら要は余計に紅羽のことが気になった。
* * * * * *
ーー1ヶ月後ーー
某ホテルの一室。要はソファに腰掛けてタバコを吸っていた。
暫くするとドアチャイムが鳴り、外から声が聞こえた。
「ご指名ありがとうございます。紅羽です。」
要はゆっくりと扉を開けると紅羽が驚いた顔をした。
「あ……なん、で……」
目を丸くしてバツの悪そうな顔をしているが焦る様子はとくになかった。
「詳しくは中で話すよ。どうぞ入って。」
「……お邪魔します。」
2人でソファに腰掛けて暫くは無言の時間が続いた。気まずい雰囲気に耐えられなくなったのは紅羽の方だった。
「あの、要さん……なんで俺の事……」
「BARでたまたま話してる人がいて気になった。」
「だからって普通指名する?普通に呼び出せばいいのに。」
「うん、でもなんか最近すれ違い多かったから。こっちの方が早いかなって。」
「ま、あ……最近忙しかったけど……」
何となく切れ味の悪い話し方をする紅羽。あまり詮索はされたくないと言ったところか。
だが要は割と直球に問いかける。
「この前みたいな、危ないこともあるのに……なんでこんな仕事を?」
「……金がいるから。それに、あれは客じゃない。」
「どういうこと?」
「たまたま引っ掛けて遊んでやった男。」
紅羽の口から仕事以外でも男と体を重ねていると聞いて要は耳を疑った。
「男が好きなのか?」
「どっちでもいい。俺を少しでも好きだと思ってくれて愛してくれるなら……」
紅羽は寂しそうにそう言った。そんな顔の紅羽を見て要は思わず抱きしめた。
「ちょっ、要さん!?」
突然の事で紅羽は驚きの声を上げ身じろいた。
「詳しく……教えてくれないかな。俺は紅羽の事をちゃんと知りたい……」
「……。」
紅羽は無言で要の胸を押し返す。
「面白い話じゃないけど、いいの?」
「うん、いいよ。」
「……何から話そうかな。」
ゆっくりと口を開いて紅羽は要に話を始めた。
最初のコメントを投稿しよう!