第1夜:紅羽

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第1夜:紅羽

望まれればなんでもする。その代わりにそれなりの対価は支払って貰うことになるけれど、そんなことは当たり前。この世の中はそういう風に出来ている。 今日もまた紅羽はどこぞの金持ちの娯楽に付き合わされる。仕事だとしても面倒くさいこともあれば嫌な事もある。楽しいだけの時間では無いことは確かだが、この『シゴト』を続けるのは一時でも「愛されている」、そんな風に思えるから。……だから辞められずにいる。 紅羽こと西嶋真生。 幼い頃に母親は知らない男と出ていった。父親は酒に溺れ暴力を奮った。仕事こそしていたが、家の中ではまるで下僕かのように扱われた。家の中で真生の人権はないに等しく、一時期は児童養護施設に居た事もあったが、そこも居心地が悪く、すぐに逃げ出した。学校はなんとか通うことが出来たが、まともに友人などは作らず、いつも1人で過ごしていた。 高校を出る頃には1人で生きていく為にはお金が必要だと考えた。その為に何をすればいいか……18になった真生は一先ずアルバイトをしお金を貯め、スマホを契約した。 暫くはアルバイトをかけ持ちしていたが体力的にキツく、余裕のある稼ぎが出来る訳ではなかったため、新たに仕事を探すことにした。そんな時に出会ったのが今の仕事だった。 たまたまインターネットで見た、ボーイの仕事。ボーイと言っても普通のではない。 身体を売るいわゆる男娼。有難いことに見た目はそこいらのモデルなんかよりも断然上で、中性的なその顔立ちと若さを利用する他ないと踏んで男性専用のデリヘルで働くことを決意した。 何故男性専用かと言うとそれは真生の過去に関係があった。 幼い頃から母親が何時でも男を連れ込み、真生が居ようが関係なく男に抱かれていた。媚びを売るような顔と声をいつまで経っても真生は思い出していた。いつでも自分の事ばかりな母親に嫌気がさし、それから女性が全て無理になった。この容姿は母親譲りだが、幸い嫌いでは無かった。 それに男に身体を開くことに抵抗はなく、まずは軽い気持成募した。そして、即採用。 すぐに客は付いたし、この美貌のおかげもあり、この仕事の中で割と有名なこの店の中であっという間に人気は出た。紅羽と名乗り、その界隈では至る所でその名前を聞くようになり、常に予約は1ヶ月先まで埋まっていてる。 紅羽を待ち望む男達はあとを立たなかった。 紅羽の顔と身体、そして一時の快感を得るために男達は高い金を惜しみなく支払った。 * * * * * 紅羽は仕事のない日でも気に入った男が居れば自分から声をかけては1晩限りの関係を楽しんでいた。それもやはり、一時でいいから誰かの温もりを感じたいと思っていたから酷い時は1日2〜3人相手にすることもあった。 仕事外では金銭を求めることはしなかったが不思議と払いたがる奴らばかり。真生は愛とお金はイコールであると思うようになり、また会いたいという男には連絡先を教えていたのだ。 もちろん、その後会うか会わないかは紅羽の気分次第だが、男達はそれでも構わないと、紅羽を望むばかりだった。 毎日携帯は客やそういう相手からの連絡で休まることは無い。基本的にはサイレントモードにしていて、気が向いた時に確認する。 店側も客たちもそれで構わないと納得していた。 そんな真生はいつも仕事後の後にとあるBARに立ち寄った。そこは真生のお気に入りの場所でもあり、男の値踏みをする所であった。 その場所が真生のよく居る場所だと噂にもなっており最近では騒がしい日も少なくはない。 だが、真生のお眼鏡に叶わないと相手にされることは無い。 そして、今日遂に出会ったのだ。 これから初めての恋を体験する男に……。 ……To be continued
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