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新時代の旋風
「はっ?笑いだと」
「そうです!お笑いなんです!コメディなんです!!」
佐山は立ち上がり拳を高く振りかざして、力説を始めた。
「先生はシリアスな場面でも、どこかじわじわと笑わせるところがある。例えば太宰の作品みたいに重苦しいのに、どこか飄々として客観的に自身を嘲るような!!」
一応有名どころは読んでいるらしい。てっきり男性ファッション誌の部門を希望していたのに、文章構成力の無さで修行のために文芸誌部門に飛ばされたのかと思っていた。
「先生!!聞いてますか!!?」
「すまない。今は気が散ってしまっていた」
「じゃあ!大事なことなので、もう一度言いますよ!!先生のコメディセンスはもはや太宰も超えています!!先生が、この有名作家の本しか売れない純文学のために、新時代を築くんですよ!!!その身を僕に捧げてください!!!!」
は?
「僕に捧げてくれとは貞操の話か」
「先生は天然なんですか」
「養殖ではないが」
「いやいや、どこのサブカル女子の合コンの決め台詞ですか!」
急に目の前の男は座り込み、腕を組んだと思ったら頭も捻り出した。
「何を悩んでいるだ」
「いや、計算尽くしかと思いきや、そうじゃない部分も多分に含まれていたのかと思うと、頭が痛いっす」
佐山は真剣な表情をして僕を見つめた。
「分かりました。荒療治が必要ですね。俺、仕事できるんで!期待して待っていてください!!!」
「どういうことだ?」
「こうなったらそうなったで、急いで社に戻ります!ではっ」
「おい!!肝心の話は終わってないぞ!!!」
ちっ、電話するかって!また連絡先聞き忘れたぁぁぁ!!!
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