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歩幅
君に合わせて広げる右足と左足。
「大股で歩くといいんだって」雑誌の情報?
すげぇ一生懸命歩いてる。
その君の姿がかわいい。
「追い付ける?」と振り返る君。
ごめん、ぜんぜん余裕だよ。
けど、わざとゆっくり歩く。
君が得意げに先を行く。
前を歩く君の背中。
ふわふわ揺れる焦げ茶色の髪。
ぶんぶんと音がしそうなほどに前後する腕を、
逆光にまぶしく見て歩く。
この時間も、この景色も—。
尊くて愛おしい。
追い付いて後ろから抱き締める。
驚いたようにビクッとしたあと、
俺の手に自分の手を重ねる君。
「手ぇ繋いで、ゆっくり歩きたい」そういう俺に、
「仕方ないなぁ」とお姉さんぶる君に、
不意打ちで唇を重ねる。
赤くなってあわてる君の手をひいて、
今度は俺の歩幅で、家路を急ぐ。
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