あたりまえ

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あたりまえ

貴女は今日も僕の家に来て 夕食を作って帰って行く 決して器用じゃない貴女がスマホを片手に ぶつぶつ言いながら テーブルを彩る いい匂い  「美味しそう」 貴女を後ろから抱きしめてそう言う 「口に合うといいな」 合うに決まってる あいつは当たり前のように 何も言わずに貴女を見ることもなく  貴女が作った飯を食っている そう思うと腹が立つ 「旦那さんが羨ましい」 「ずっと一緒にいたらそんなもんだよ」 貴女はいつも言う  そんなことない ずっと一緒ならもっと幸せ 「帰らないで」わかってる わかってるよ けど 「一緒にいたい」 玄関さきで貴女は困った顔をする ねぇ貴女も離れたくないと思う? 切なげにゆれる瞳に願いをかける 「また くるね」 振り切るようにドアを開ける 知っている 貴女が泣いていること 俺を思ってくるしいこと 「またね」 閉じられたドアに向かってつぶやく 「愛してるよ」
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