束縛

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束縛

君はまっすぐ。 何のためらいもなく言う。 『好き』 君はまっすぐ。 何のためらいもなく 僕の腕の中に飛び込んでくる。 当たり前のようにある『君』に、 僕は慣れていない? 君の『好き』はずっと僕に向けられる? 『先のことはわからない』 そんなことはわかっている。 ドラマや漫画でよくある不安。 『君を失いたくない』とか言う、 安っぽい気持ち。 そう思っていたのに。 立ち止まってしまった僕のせいで、 ふと離れてしまった君の手が、 そこはかとない不安を呼び起こす。 君もすぐに立ち止まって、 僕のそばに戻るのに、 僕は思う。 『どんな時も離れないように、しっかりと握っていたい』と。 でもそれは、その気持ちの名前は『束縛』 僕はその気持ちを持ったことなかったし、 持ってはいけないと思っていた。 束縛(そんなこと)するのは最低なやつだと思っていたから。 でも、もう無理だ。 となりに立った君の手をきつく握る。 その強さに、君の顔がゆがむ。 それでもそうしていたい。 こんな僕にも君は言ってくれる? まっすぐに 『好き』 だと。 その屈託のない笑顔で…。
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