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けれど、相棒のキノさんの方はどうなんだろう?
「じゃあ、キノさんは? どこでどう知り合われて一緒に探偵をするようになったんですかですか?」
「うーん、そこら辺の事情もちょっと複雑なんだけど――ざっくり話すと、今から二年くらい前俺の父親が死んじゃってさ、まあちょっとした財産があったもんで、親族の間でお定まりの相続争いが持ち上がったんだ。で、そん時助けてくれたのが法律事務所でアルバイトしてたキノさん。あの人ロースクール卒業して司法試験に受かっているからそういうことに詳しいんだよね」
「へえーそうだったんですか」
キノさんは見るからに頭が良さそうな人なので、司法試験に合格していると聞いても、格別の驚きはなかった。
「で、一応相続問題は解決したんだけどいろいろ嫌んなっちゃって。お金がらみの人間の醜い部分をいろいろ見たせいでさ」
と、リクト君は続ける。
「だからパッとお金を使っちゃおうと思って、相続した財産はたいて探偵社を開業したってわけ。でもなぜかキノさんが心配して俺に付き合ってくれて。本当はキノさん弁護士でも裁判官でもなればいいのにね。――もっとも俺が一人で探偵社を切り盛りするなんて無理だから、キノさんには本当に感謝しているんだけどさ」
「なるほど、そういう事情だったんですか」
「とは言ってもさあ、開業して四か月、なかなかまともな依頼がなくて……やっと来た猫探しもこの有様だもん。もちろん理想と現実が違うのは分かっているけどね」
と、リクト君は肩を落す。
「俺、表面ではキノさんに対し生意気だったり我がまま言ったりしてるように見えるかもしれないけどさ、本心じゃ申し訳なくてしかたないんだ。先行き暗い探偵業なんかに巻き込んじゃって。キノさんにも未来ってものがあるのに」
探偵所所長のリクト君と所員のキノさん――
お金を出した関係上そうしたんだろうけど、さっき感じた通り実際の立場は逆で、キノさんが兄でリクト君は弟のようなもの。
どちらにしろ、二人の絆は思った以上に固そうだ。
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