キセキの探偵

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「あ……す、すみません。動物のことになるとつい」  私は少し恥ずかしくなって、言い訳をした。 「お仕事中なのにどうでもいい話をしてしまって……」 「いえいえ、なかなか参考になりましたよ」  キノさんが穏やかに笑う。  が、リクト君は真顔で現実的な指摘をした。 「でもさ、それが正論だってのは認めるけど、実際子猫(リリィ)が見つかって逃げようとしたらどうすんの? 捕まえる手段がなくなっちゃうじゃん」 「あ、それはですね――」  しかし、その点自信があった私はきっぱりと言い切った。 「猫って無理して捕まえようとしなくても、気持ちが通じ合えば案外逃げないで捕まってくれるものなんですよ。警戒心の強いノラ猫ならともかく、飼い猫なら見つかりさえすればまず大丈夫です」 「へえ、そうなの? うーん、でも俺もキノさんも猫のことに関してはさっぱりだからなあ」  リクト君が一瞬思案顔をし、それから手を打って叫んだ。 「そうだ! あのさ、もしよかったらこれから俺たちと猫探しに付き合ってもらえない? バイト料は出すから!」 「え!? これから……ですか?」  いきなりそんなお願いをされるとは、さすがに思わなかった。 「うん、キミと一緒ならきっとリリィを見つけられるような気がするんだよね」  ごく自然な口調で話すリクト君。  何だかナンパしているよう聞こえなくもないセリフだが、きっと彼は本気からそう思っているのだろう。  けれど、今度はキノさんが眉をひそめて怒った。 「こらっ、リクト! いくらなんでも調子に乗りすぎです。この方は今大事な就職活動の途中なんじゃないですか。われわれの猫探しに引き込んでそれを邪魔するなんてとんでもないことですよ」 「えーでもさ、キノさん」  と、リクト君が声高に言う。 「そうは言うけどさ、果たして俺たちだけでリリィを捕まえることができると思う? しかも今日中だよ」 「それは……」  キノさんが言葉を濁す。 「ほら、キノさんも難しいと思ってんでしょ? だからさ、この人に頼んでみようよ。――あの、そういうわけで今日一日、俺たちの猫探しの助手をしてくれないかな? もちろん無理にとはいわないけど。それともこれから何か予定ある?」 「いえ、午後は空いてますけど……」  どうしよう。   猫好きの身としては協力したいけれど、猫探しは簡単そうで案外難しい。  その助手なんて、安易に引き受けてよいものだろうか?  なにより、人見知りの激しいこの私が、短時間とはいえ見ず知らずの男の人二人と、気まずい思いをしないで上手くコミュニケーションを取ることができるのだろうか?  でも……ここで断ってしまうと、なぜかこれから先、一生後悔し続ける気がする。  それだけは、どうしても嫌だ。
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