キセキの探偵

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「私でよければ、猫探しのお手伝いさせてください」  と、私は意を決して言った。 「ホント? ラッキー! 助かった」  リクト君が嬉しそうに叫ぶ。  が、片やキノさんは浮かない顔で言った。 「……しかし、この契約は依頼主と我々キセキの探偵社との間に結んだものですからねえ。勝手に第三者の手を借りるというのはコンプライアンス的にまずい気もしますが……」 「相変わらず固いなあ」  そんなキノさんに、リクト君は飽きれ顔だ。 「浮気調査とかプライバシー重視系の依頼ならともかく、単なる猫探しだよ? 別に誰が手伝ったって問題ないじゃん」 「しかし……」 「あのさ、キノさん。そんな細かいことより、依頼主の人にとっても猫が見つかった方がいいに決まってると思わない? 俺なんか間違ったこと言っている?」 「いいえ、確かにその通りです」  キノさんはうなずいた。 「リクト、あなたには敵いませんね。――分かりました。依頼主には事後承諾を得るとして、是非お願いしましょう」 「あの、本当にそれでいいんでしょうか?」  私は少し心配になって二人に尋ねた。 「大丈夫大丈夫!」  リクト君が安心させるように言う。 「その依頼主の人って、そこのタワマンに住んでるんだけどさ、えらい金持ちのおばさんで心の広そうな人だからまったく問題ないと思うよ」 「リクト! 依頼人のことをベラベラ喋るのも絶対にバツですよ」  キノさんはリクト君をそういって叱ったあと、こちらに向き直って言った。 「ともあれ、私としても是非協力をお願いしたいのですが――ああ、そういえばまだお名前をうかがってませんでしたね」 「椎名(しいな)です。椎名(しいな)(あおい)と言います」 「へーめっちゃ綺麗な名前じゃん」  それを聞いて、リクト君がふとつぶやく。  が、名前を褒めてくれたところで、あまり嬉しくはない。  むしろ、私にとって、このいかにも美少女キャラ的な姓名と現実のギャップが、昔からの悩みの種の一つだった。  しかし、しかしだ――  リクト君は、またしてもごく軽い口調で、 「顔もカワイイし、ま、よろしく! 俺たち何だかいい三人組(トリオ)になれそうじゃね?」  と、言ったのだった。   そしてまさに今日がその期限の日で、午後八時までになんとかリリィを見つけ出して捕まえないと、契約は打ち切られてしまう。  今は午後の三時、もう時間はあまり残されてない――  ということで、私たち三人は少しでも捜索の効率を上げようと、いったんバラバラに別れ各自リリィを探すことにし、もし誰かがリリィを見つけたらお互い携帯で連絡を取り合い集結することに取り決めたのだった。
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