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悩める変人、由良ちゃん
私は、変人だ。
いきなり何だとか、つっこまないで。
私、今すんごく落ち込んでるから。
先生に変人って言われた。
それはいい。
だって自覚してるし。
で、その後が問題だった。
先生に「お前みたいなタイプの変人には世渡りが苦手な人が多い」って言われた。
いや、分かってたよ。
だって私、変人だもん。
でもさ、改めて先生の口から言われると堪えるものがある。
私は、坂本由良。
中二女子。
っていっても、中身はちょっと違う。
好きなものは、動物、古生物、ドイツ語、憲法、法律、物理学、特に相対性理論、数学、特にガウス記号、などなど。
好きなことは、読書、記憶すること、長文の暗唱、図鑑を見ること、論破すること。
ね、私って変人でしょ?
勉強は好きだし得意だけど、運動は好きだけど苦手。
ここだけ普通かもね。
でも、私ってこんなふうな変人だから、好いてくれる友達もいれば、「言ってること意味が分かんない」って敬遠されることも多々。
悲しくもなるよ。
同じクラスの鈴木萌ちゃんみたいに、普通の女子になりたかった。
部屋で一人うじうじ。
それが今の状況ね。
たまらなくなって、私は叫んだ。
「あーもう!もし神様とかいるんだったら、出てきてよ!!」
と、鍵が閉まっていたはずの窓がぴしゃっ!と開いて、何かが入ってきた。
な、何!?
何が起こったの!?
「呼ばれて飛び出て、じゃじゃじゃじゃーん!僕、神様見習いセルフィです!こんにちは、始めましてー!」
「それ」は、整った容姿で同い年くらいの少年だった。
「…は?」
思わず声が漏れる。
えっと、何言ってんの?
「由良ちゃんのお悩み、叶えます!で、何?」
「いや、誰?神様見習いとか、ふざけてるの?」
私がそう言うと、少年はガガーン!と効果音がつきそうなかんじのショック!といった表情で、何やら慌て出した。
「うえ!?い、今呼ばれたよね!?呼ばれたと思ったんだけど!?嘘、呼んでなかった?ウワァー!僕、イタい奴じゃん!どうしよー、また今期の成績下がっちゃうよー!」
…誰、この人。
「神様、見習い?」
「うん、そー!どっかの神様に弟子入りして、修行して、で、テストに合格したら僕も晴れて神様ってわけ!」
こんな威厳のない神様がいてたまるか。
「ま、僕落ちこぼれらしいけど」
だよね。
でも、なんだか本当に、コイツが神様見習いなら、私の願いを叶えてくれるなら。
駄目でもともと、任せてみてもいいかも。
ああ、こういうのを投げやりって言うんだな。
「叶えて」
「え?」
「叶えてよ、願い。神様なんでしょ?」
少年が、パッと顔を輝かせた。
「うそ、いいの!?嬉しー!今テスト中だから、いっぱい悩みを解決しないといけないんだよぉ!」
ふーん、神様見習いも大変だな。
「じゃあじゃあ、まず最初に、君の名前は?」
「…個人情報の漏洩」
「あ、そっか!えーとじゃあ、ニックネーム!」
ニックネーム?
私は少し考えて、答えた。
「…かわりん」
「かわりん?」
先生に、変わった子だから、って勝手につけられたあだ名。
先生はあだ名のセンスないと思う。
「おっけー、かわりんね!じゃあかわりん。君の悩みを聞いてしんぜよう!」
大仰な仕草でセルフィが私を見る。
私は、藁にも縋る気持ちで口を開いた。
「私を…私を、普通の人にして!」
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