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急いで加持の膝から下りて彼の横に腰掛けると、いつの間にそこにあったのか、加持は座席に置いていたバスタオルを掴むと私の顔に押し付けた。
「そんなすぐそばにあったなら早く頂戴よ」
「うるせーさっさと拭け。風邪引く」
拭けと言われても、もうほぼほぼ乾いてる。それどころか身体は冷えきっている。
加持の膝に乗ってる時は、緊張していたのかあまり気付かなかったけど、鳥肌だってたってるし、下手したら唇の色が悪くなってんじゃないかと思う。
「もう風邪引きそう」
「そうなったら看病してやるよ」
「やだよ。アンタ何してくるか分かんないし」
失礼なやつだな、と笑う加持は、バスタオルにくるまる私の頭をぽんっと撫でる。
「煙草吸ってくるから、その間に着替えといて」
そして加持はそれだけ伝えると、勝手に車から出ていってしまった。
いつの間にか雨はほぼ止んでいて、薄ら晴れ間すら見える。
夏の天気は、加持のように気まぐれだ。
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