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そう、あれは確か二週間程前にあった同期会の日だった。
私の勤めている会社は街の海沿いにある工業団地の一角にあって、ここの支社だけでも従業員数は恐らく300人程。
この支社での同期は10人いて、入社してから三年経った今でも皆辞めることなく、度々飲みに行くくらいには仲がいい。
だからこの日も仕事終わりに皆で飲みに行っていた。
居酒屋の座敷で少し気の弱い男、安藤(あんどう)の相談に乗っていたのは、私ともうひとりの男、加持 紘輝(かじ ひろき)。
「なぁ柊(ひいらぎ)、加持、俺どうしたら井上と付き合えるかなぁ」
「私達に聞く?」
開始から一時間で既に出来上がってる安藤は、少し遠くの席で他の人達と楽しんでいる井上ちゃんを見つめながら私達に質問を投げかける。
これは恋愛相談というやつだろう。多分聞く相手間違ってるけど。
「もうさっさと告白すりゃいいじゃん」
「柊って冷めてるよなぁ。いっつもそうだよなぁ」
「分かってんなら私に相談しないでよ」
失礼な事を言いながらハイボールを一気飲みする安藤。そんな飲んで大丈夫かな。
「安藤、この女に相談してもなーんもいいアドバイス貰えねぇよ。俺だけで十分」
「いや、加持の方がもっと役に立たないと思うけど」
私の横に座ってる加持は、親指で私のことを指しながら安藤にこそこそ告げ口をした。こそこそって言っても丸聞こえなんだけど。
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