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今度は箱に入った残りのチョコを見つめた後、絵本で遊んでる陽里に視線を移した紘輝。
その目は何故か少し寂しげで、思わず「どうしたの」と尋ねてしまった。
「…いつかあいつも、好きな男にこれをあげるのかと思うと…」
「気が早くない?」
「なんかこのチョコ、失恋の味がする」
「真顔で何言ってんの」
「いつかあいつも彼氏連れてくんのかー。俺みたいなイケメンでいい男じゃないと無理だなー。ひいろのおっぱいも視界に入れてほしくない」
そう言って私を上目がちに捉えた彼を見は「ひいろ、慰めて」と隣に座るよう促す。
仕方なく紘輝の隣に腰を下ろすと「お前も失恋チョコ食う?」と私の方に箱を差し出してきた。
「ねぇ、その失恋チョコって、なんかおかしくない?」
「なにが」
私と陽里が心を込めて作ったチョコを一瞥してから、今度は私が上目がちに紘輝を捉える。
「これ、私も一緒に作った」
「……」
「紘輝が好きなのは私でしょ。そして私は…その…大好きなあんたのために…作ったわけで…」
「……」
「…失恋、してなくない?」
子供の前で、なに小っ恥ずかしいことを言っているのだろう。
言った瞬間、後悔の念にかられ、思わず紘輝から顔を背けた。
「ひいろ」
紘輝の手が、私の腰に回る。そのまま優しく抱き寄せられ、耳元で紘輝の声が響けば、ぞくりと身体が震えて一気に脈が速くなった。
「おっぱい枕して」
「何でいまそれが出てくんの」
ドキドキして損した。この男は、やっぱりこういうやつだ。
「いいだろバレンタインなんだから」
「チョコあげたでしょ」
「足りない。お前のおっぱいが足り」
「子供達寝かせてくる」
「じゃあその後は?」
「……」
立ち上がった私に、紘輝はゆるりと口角を上げた。
「…少し、だけね」
──結局私は、一生この男には敵わない。
好きな男のためなら、少しくらいワガママきいてもいいよね。バレンタインだし。
ハッピーバレンタイン♡
fin.
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