16人が本棚に入れています
本棚に追加
[1]悪魔にするための物語
天明大学、青葉キャンパス。ここを囲む木々は冬を控え、すっかり寒木姿。周囲はいつもより落ち着きが増していた。
そんなキャンパスで、今年二年生となった俺はスプーン片手に食堂で一人、スマホでゲームをしていた。
すると軽快な声で
「多喜またゲームやってんの?」
と健也が向かいに腰掛ける。俺はスマホに視線を落としたまま
「んん、イベントで目が離せなくて」
健也は興味なさげな声で
「ほえぇ、そんなおもろいのかそれ。課金とかあんだろ」
「んん。でも課金有利なとこあんま無いから、その点優秀」
「ってかスプーン、テーブルについてるけど?」
「んん。やべ、これ使えないのか……はぁ、今回のイベント無理だな」
俺は、諦めの音と共にスマホをテーブルに。隅のナプキンを数枚取りだしテーブルを拭きあげる。
健也は、箸を宙で上下させ
「あ、そうだ。お前聞いた? SNSの勇者募集の話」
俺は、冷めたカレーをすくいながら
「……え、何それ」
「キラって奴が投稿しててさ、ちょっと待って」
と、スマホを俺に見せる。そこにはキラという人物の投稿文。
『ある世界で私は、世界を救うべく神になろうとしている。
しかし魔王がいる限り神にはなれず。勇者がいなくては魔王が倒せないうえ、魔王の手先が支配する三大陸へ足を踏み入れることもできない。
最初のコメントを投稿しよう!