[1]悪魔にするための物語

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[1]悪魔にするための物語

 天明大学、青葉キャンパス。ここを囲む木々は冬を控え、すっかり寒木姿。周囲はいつもより落ち着きが増していた。  そんなキャンパスで、今年二年生となった俺はスプーン片手に食堂で一人、スマホでゲームをしていた。  すると軽快な声で 「多喜(たき)またゲームやってんの?」  と健也(けんや)が向かいに腰掛ける。俺はスマホに視線を落としたまま 「んん、イベントで目が離せなくて」  健也は興味なさげな声で 「ほえぇ、そんなおもろいのかそれ。課金とかあんだろ」 「んん。でも課金有利なとこあんま無いから、その点優秀」 「ってかスプーン、テーブルについてるけど?」 「んん。やべ、これ使えないのか……はぁ、今回のイベント無理だな」  俺は、諦めの音と共にスマホをテーブルに。隅のナプキンを数枚取りだしテーブルを拭きあげる。  健也は、箸を宙で上下させ 「あ、そうだ。お前聞いた? SNSの勇者募集の話」  俺は、冷めたカレーをすくいながら 「……え、何それ」 「キラって奴が投稿しててさ、ちょっと待って」  と、スマホを俺に見せる。そこにはキラという人物の投稿文。 『ある世界で私は、世界を救うべく神になろうとしている。  しかし魔王がいる限り神にはなれず。勇者がいなくては魔王が倒せないうえ、魔王の手先が支配する三大陸へ足を踏み入れることもできない。
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