合鍵

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「とりあえず乗って」 「…え?」 「人に見られたら恥ずかしいだろ」 俺が泣かしてるみたい、と続ける彼は親指を助手席の方へクイクイと向けている。 ここで鍵だけ渡してさよならだと思っていたから、まだもう少し一緒にいれることが嬉しくて小走りで反対側へ周り助手席のドアを開けた。 「お邪魔します」 ふわりと香る芳香剤は前と変わっていなくて、その匂いが懐かしくてきゅんとした。 亮さんの顔を見納めておきたいのに、泣き腫らした目を見られたくなくて自然と私の視線は前に向く。 何か話さないと…と、必死に話題を考えていると、私より先に口を開いたのは彼だった。 「ちょっとドライブでもしよっか」
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