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俺は幼い頃から“自分の店を持ちたい”という夢があった。
それは特別何か理由があったとかではなく、両親が居酒屋を営んでいるのを近くで見ていたから必然的にそうなったようなもので。
だけど中途半端な気持ちだった訳でもなく、調理師免許だって取って、働きながらお金だって貯めて、色々と準備していた時だった。健二に誘われたのは。
この街に来たばかりの時はほんとに大変だった。
知り合いは健二だけだし、慣れない環境に体調は崩すし。
なのにアパートに帰ればひとり。
あぁ、やっぱり奈緒と別れずに連れてきたらよかったかな、なんて弱音を吐きながら奈緒と一緒に写ってる写真を見たりもした。
だけどあの頃の俺は彼女より夢の方が大事で。
何だかんだ寂しさより仕事のことで必死になっていた。
そして健二と店を始めて半年くらい経ち、仕事にもだいぶ慣れてきたときだった。アイツに会ったのは。
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