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ストーリー2
しばらくして、いい匂いが鼻をこすった、顔をあげるとサンドイッチ。
「でけ」
声が出てしまった、女性店員が笑っていた。
「大学生も多いからね、安くてボリュームあるから、お昼はすごい混雑してるのよ、持ち帰りもやってるからね」
そういわれた、確かに五百円で、これはサンドイッチと言うよりはハンバーガーの域だ。
フランスパン、食パン、二種類のパンが出てきた。
挟んであるのは野菜が中心だが、ハムとあげたコロッケが熱々でうまかったー。これだけで満足だ。持ち帰りで四百円?やっていけるのか?
入り口では男性が立って何かを話している、む、ムムム!あれは、唐揚げではないか?
すぐにメニューを見た、ある、唐揚げ、それも三百円であのボリュームか?コンビニより安いかも?これはぜひ帰りに買って帰らねば。
そして俺は自分の世界に入り込み、ゆっくりと本を読んでいた。
ブー、ブー。
バイブレーターの唸り声、携帯を覗くと六時を過ぎていた。父さんだ、どこにいる?
珍しいなと思いながら、都立図書館にいる。
田神さんが来ている、帰って来いという。
ソッチも珍しくないか?
俺は急いで帰る準備をした。
電話が来るということは母ちゃんも帰ってきているか帰ってくるということ、唐揚げは今度だな。
コーヒーは一度お代わりをした。集中していたら立ち上がるのも面倒、そうか、だからお代わりと書いてもみんな二杯目以降、あまりとりに行かないのか?カウンターまで自分で取りにかなきゃいけないしな、それはもうかる要因だよな、考えたな。
それでも五百円安くないかと思ったら、いつのまにか店は人でいっぱいだった、俺が今までいた席にも男性が三人座った。
「繁盛してるんですね」
「ありがたいこった、ン?初めてか?」
はい、返事をした。
カウンターの中、鬚を生やした男性がまた来いとレシートをポンとよこし、指さした、上?俺はそれを見上げると、そこにはシャーロックの横顔。
俺の持っている本を指さし、ピストルにようにした。俺は思わず笑い、頭を下げてそこを出たんだ。
店の名前はコーヒーラウンジ、ストランド・М・・・?
ストランドマガジン?まさかな関係ないかも・・・まあいっか。
俺はカバンに本を入れ、急いで帰った。
「ただいま」
玄関には、ピカピカの靴に、履きつぶした合皮の靴が並んでいた、恥ずかしくて父さんのを下駄箱にしまった。
キッチンからは珍しい人影。
「あらおかえり」
「ただいま」
エプロン姿の母ちゃん、明日は雪か?
「おかえり」
父さんの前にいる人は黒縁の眼鏡を押し上げた。強硬手段に出たな、そうおもった。
俺に座れと肩を押し下げた、父さんはキッチンのテーブルへ行った。目の前の田神さんが、わきにある、これまた高そうなカバンの中をごそごそ見ながら話してきた。
「都立図書館だそうだな」
「リニューアルしたから覗いてきた」
「そうか、すまないが、これを見てほしくて来たんだ」
資料と書かれたものを手にした。
「お蔵入りですか?」
「うん、時効のあった時だからね」
「古いですね、戦後?」
「ああ、関係者はまだ生きている」
それを読み始めた。著者は、柳智之、当時のフリージャーナリストだそうだ。かいつまんで書いてあるが俺にはそれだけでわかるだろうという。
昭和35年、東京都内にある公爵家で惨劇が起きた。
当時、犯人である、中山英子は、公爵家の奥方、本間菊に英語を教えに来ていた。
本間の主人、慎一郎は外交官としてイギリスにわたることになっていて、家族も連れて行くつもりだった。
始めは、単身行こうとしていたが、両親に妻を連れて行かないとは何事だと言われ、極めつけは、上司にも家族を連れて行くように言われ、渋渋了解したように書かれている。
ある時、外からものすごい音がして、妻のもとへ行ったところ、彼女は、何者かに射殺され死んでいた。
場所は、池の上にかかった橋の上、彼女の手には、手紙が握られていた。
なぜか、ピストルが中山英子の服の間にあったことで彼女は捕まった。
無実を訴えたが、ピストルがあることだけで大問題になった。
彼女は、絶対にありえないと訴え続けた。
当時、江戸川乱歩や中島河太郎、横溝正史がこぞってある作家の小説から得た知識で、トリックを考え出したと言われている。
今回の事件にそっくりな、コナンドイルの作品、ソア橋。
「ソア橋?じゃあ、自殺じゃないですか?」
「そうなんだけどな、続きを読んでくれ」
一貫して自分の物ではないと主張してきた彼女はあるときを境に、言葉を話さなくなってしまった。
本間氏のイギリス行きである。
彼女は約十数年服役し、外へ出た。獄中で一人の女の子を産み、彼女はそれを隠すために黙っていたのではないかと、それは憶測でしかない、彼女は東京から姿を消してしまったのだから。
昭和五十三年四月、ジャーナル・ジャーナル紙掲載。
ふーん、推理小説とトリックね、そしてその後ろには。
「達筆だな?何が書かれてるのかわかんないよ」
それを鼻で笑った田神さん
「当時の捜査資料だ、俺も読めん、ただ、ちゃんとしたところのは読めるだろ?」
ああ、こっちか、これなら読めるけど、でもこれ今更掘り返してどうなるの?と俺は資料を読んでいた。
「実際彼女が服役していたのは八年ほどだ、彼女は刑期を終え出所している」
なんでかな?殺人でしょ?
「なんと言うか、そこは、なんか力が働いたんだろうな、こっちが事実だから」
するとカバンから紙袋を出した。本屋のものだ、中から出してきたの雑誌、○○デー。
それを開いて見せた。
昭和のぬれぎぬ、母親は国家に殺された?
そこには、コメンテーターと活躍している、外山海斗さん、彼の祖母が中山英子、そして母親は結婚先での中傷に耐え切れず、彼を産んだ後自殺。
彼は祖母の無実を晴らそうとこの世界に入ったという。
「それで、これだ、まだ裁判所には出していない、その前に私に連絡が来た」雑誌の中にしおりのように挟んであった一枚の名刺、福沢愛と書かれた弁護士のものだ。
ああ確かこの人は田神さんの親友の弁護士さん、依頼者が外山さん、無実ね…
「田神さんの力で止めろっていう訳ですか?」
「俺にはそんな力はない、ただ、彼女の事を裁判で無罪だったという事は簡単なんだ」
冤罪、それを避けたいとか?
「まあ、そういうことだ」
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