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「……受け取れ……ません……」 首を横に振りながら、はっきりと断る。 すると、終始笑顔だった井上さんの表情が一瞬で真顔に変わった。 「何で?婚活パーティーなんかに参加してたってことは、今すぐ結婚したいってことじゃないの?」 突然訳の分からないことを言い出した井上さんは、冷えきった瞳で私を一瞥したかと思うと、急に私の肩をトンっと突いて、ソファに押し倒した。 そのまま私の上に跨って、両手を縫い付け、身動きが取れなくなった私を上から見下ろす。 その動きは、まるで慣れているかのように無駄がなかった。 あっという間の出来事に、私の脳が理解する方が遅かった。 「ほんと、腹立つ女」 気付けば組み敷かれていて、自分の身が危険だと思った時にはもう手遅れだった。 私の頭の上で、器用に私の両手を片手で押さえ込む。 すると空いた方の手は、躊躇なく私の太腿を撫でた。 「や、めて……っ、」 「やだ。結婚してくれるって言うまでやめない」 何とか抵抗しようと、足をジタバタさせるけれど、当然彼には何のダメージも与えられない。 寧ろ彼は、抵抗する私を面白がっているかのように片方の口角を上げた。
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