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「忙しくなんかないです。寧ろ暇で……」
『え……?』
「あ、そうだ、この間は本当にすみませんでした」
慌てて先日のドタキャンを謝罪すると『全然いいのに。それより体調はどう?良くなった?』とやっぱり私を心配してくれる井上さんに、我慢していた涙が一筋流れる。
「もう大丈夫です。今度埋め合わせさせて下さいね」
それに気付かれないように明るく振る舞えば、井上さんは安心したように『よかった』と零した。
『じゃあ、その埋め合わせの日、今決めていい?』
「あ、はい。大丈夫ですよ」
自分のスケジュールはスマホのアプリで管理しているけれど、いつ予定が空いてたかなーと考えながら返事をする。
って言っても、休日はほぼほぼ予定なんてなかった気がするけど。
『じゃあさ、今すぐ会えない?』
「……え?」
『声聞いたら、会いたくなった』
いつもより控えめなその声が、胸にじんときた。
「はい……会えます」
気付けばそう返していた私は、無意識にベンチから立ち上がり改札の方へ向かっていた。
きっと待ち合わせはいつもの場所だから。
『すぐ向かうね』
「はい、私も」
そのままお互い電話を切った。
はやる気持ちを抑えながら改札を抜け、ポケットにスマホを入れた私は、タイミングよくホームに来た電車に乗り込んだ。
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