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井上さんの車に乗るのは二度目だ。 八人乗りのミニバンは、ゆったりとしていて乗り心地も抜群。 こういう大きな車に乗るということは、やっぱり井上さんは結婚願望が強いのかしれない。 夜の道は普段より交通量も少なく、街灯やネオンは煌びやかでキレイに見えて、私の荒れてる心が浄化される気がした。 だからなのか、窓の外の景色から目が離せない。 このまま家に帰れたら、律にも普通に接することが出来るんじゃないかと思うくらいには、私の心に沁みた。 「鈴ちゃん、海が見える公園でも行く?」 不意に声を掛けられて、くるりと窓から井上さんへ視線を移す。 夜の公園って響きだけでワクワクする。 しかも海沿いなんて、ロマンチックでしかない。 「はい」とこくこく頷くと、井上さんは優しく目を細めた。 よくドラマや映画のワンシーンで見る、海沿いの公園。 潮風はやや冷たいけれど、気持ちを落ち着かせるにはこれくらいが良かった。 二人でベンチに座って、数十秒ほどぼんやりと海を眺める。 さっきまでの慌ただしさが嘘のように、時間がゆっくり流れているように感じた。 「海が綺麗だねって言いたいけど、真っ黒だね」 「でも夜景が綺麗なので癒されます」 横にいる井上さんは苦笑いを浮かべているけれど、私は正直どこかのお店に行くよりはこういう所の方が良かったので、素直に感謝している。 それを伝えるように井上さんに微笑みかけると、井上さんは「喜んでもらえたなら良かった」と、私の頭をふわりと撫でた。
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