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「鈴ちゃん、本当に体調良くなった?」 「え?」 「なんか疲れてない?ていうか、やつれた?」 「……」 そんなに顔に出ていただろうか。すっぴんだから余計に隠し切れていないのかも。 平静を装っていたつもりだったのに、見抜かれたことに驚きを隠せない。 これも年上だからなのか、それとも井上さんの能力なのか。 「何か嫌なことでもあった?」 「……えっと…」 「あ、無理には聞き出したりはしないよ」 「いえ、そんな大したことじゃなくて……その……弟と、喧嘩しちゃって……」 「……そうなんだ。兄弟喧嘩で落ち込むなんて、鈴ちゃんは優しいお姉さんなんだね。俺なんか兄貴と毎日のように喧嘩してたよ」 そう言ってケラケラ笑う井上さんは、私を励まそうと明るく振舞ってくれているのがよく分かる。 それが嬉しくて、思わずふふっと声を出して笑うと、井上さんもにこりと微笑んだ。 「井上さん、お兄さんがいらっしゃるんですね」 「そうそう。一つしか違わないから小さい頃から喧嘩しかしてないよ」 「井上さんみたいな優しい人が喧嘩するなんて、想像出来ないです」 こんな温厚な人が声を荒らげて怒ることなんてあるのだろうか。 頭の中で思い浮かべようとしたけど無理だった。
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