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律に告白されたからとか、そういうのじゃなくて。
ただ単に、この家から出ていくことに抵抗がある。
それが、律と離れたくないからなのか、律をひとりにしたくないからなのか、それとも他に理由があるのかハッキリと分からないけれど。
井上さんからの告白は嬉しかった。なのに、何でこんなに迷ってしまうんだろう。
そんなことばかり考えていたら、全然寝付けなくて。
その結果、いま私は三時間睡眠で目をしょぼしょぼとさせながら朝食とお弁当を作っている。
っていっても、ほとんど昨日の夕飯の残り物を出すつもりなのだけれど。
「……あ、律おはよ」
何とか朝食の準備を終えた時、寝起きの律がリビングにやってきた。
うん、昨日はあんなにイライラしてしまったけど、もう大丈夫だ。普通に出来る。
そんなことを考えながら律に挨拶をしたけれど、今日は返事がない。
いつもなら、目は合わせてくれないけれど、小さい声でも必ず返事はしてくれる。
それなのに、今日は挨拶を無視して、視線だけ私に向けてくる。
いつもと逆パターンに、どうしたものかと小首を傾げた。
こっちに向かって歩いてきた律は、ダイニングテーブルの横を通り過ぎてキッチンにやって来る。
そのまま冷蔵庫を開けるのかと思ったけれど、それすらもスルーして私の目の前で止まった。
久しぶりにこんなに視線が絡んで、予想外の出来事にドキドキする。
でもそれは全然甘い雰囲気とかじゃなくて、どちらかというとピリピリしていた。
私、何か律を怒らすようなことをしただろうかと考えてみるけど、何も思い浮かばない。
どちらかというと、律がナツキちゃんを連れ込んで変なことしてたんだから、怒るとすれば私の方だ。
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