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「うん。井上さんと会ってた」
「……」
「だって律が女の子連れ込むから、」
「なにそれ。俺が女といたら鈴は男に会いに行くのかよ」
普段より何トーンも低い声でそう放った律は、呆れたような目で私を見てくる。
違う、別に女の子といたからじゃない。
わざわざ私に見せつけるようにいかがわしいこと始めたから、私が気を使って家から出ていっただけだ。
井上さんに会ったのはたまたまで、別に律が女の子といるから男の人に会いに行ったとか、やられたからやり返すみたいな、そういうのじゃない。
そう言って誤解をときたいのに、目の前の律があまりにも怒りをあらわにしているから、思うように言葉が出ない。
それよりも、ただ律が怖くて、思わず口を噤んでしまう。
律は何も言わない私を見て肯定ととったのか、はぁ、と小さく溜息を吐いた。
「俺の気持ち知っててそんなこと言ってくるとか、ほんと鬼畜だよな」
「……」
「ソイツと付き合えば?いい男なんだろ?」
「……」
「良かったな。年上で頼れて、鈴にピッタリじゃん」
「……」
「これで満足?心配しなくても、もう俺からは何も言わねえよ。お幸せに」
吐き捨てるようにそう言った律は、まだ残っている朝食をそのままにして席を立つ。
最後に冷たい目で一瞥して、リビングから出ていってしまった。
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